雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

肉食屋敷

肉食屋敷

肉食屋敷

 日本ホラー小説大賞短編賞作家による短編集。恐竜を現代に蘇らせようとした科学者は、誤って恐竜の滅亡の原因となった、地球に衝突した隕石を分析し地球外生命体を復元してしまった「肉食屋敷」、人間の身体でさえ機械の道具と化し、死体が商品として取り扱われている腐敗した遠未来を描いたSF「ジャンク」、妻に当てた三通の手紙、未来から過去へと三通の手紙を遡る中、少しずつ狂気が見え隠れする「妻への三通の告白」、主人公は自らの中に眠るもうひとりの人格に脅えている、彼(彼女)は主人公が眠っているときにだけ目を覚まし様々な凶行を働く……「獣の記憶」、以上の四篇からなる。
「肉食屋敷」小林泰三の本領が存分に発揮されている一篇。陰鬱とした心象・風景描写から緩やかに異界に入りこみ、一息に広げた翼で読者を包み込み、闇の中に突き落としてしまうように、容赦がなかった。久しぶりに読んだと言うこともあり、ちょっと夜が恐くなりそうだ。「ジャンク」人造馬と人面租から『吸血鬼ハンターD』を思いだした。あれと比べると格段に頽廃的で腐敗臭が漂っているけれど、ミステリ要素も含んでいて、面白かった。「妻への三通の告白」構造としては面白い。まず最初に三通目の手紙があって、次が二通目で、最後に一通目の手紙。当然、一通目の手紙には様々な謎への解答が書いてあるわけだけど、そのパワーが弱い。前二作が良かったものだけに、やや残念。「獣の記憶」は序盤が退屈だったが、最後の解決編および最後の一行の攻撃力が絶大。なるほどなるほど、そう来たかと。