カオス レギオン03 夢幻彷徨篇 (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 冲方丁,結賀さとる
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2004/05
- メディア: 文庫
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主人公が記憶を喪失するという物語は、ライトノベルに限らず世に多いが、この使い古された手をここまで鮮明に、そして斬新に使いこなせるのは、さすが冲方と言ったところか。他の多くのアクション小説がそうであるように、本書も登場人物のひとりひとりが必殺技を持っており、それをいかに工夫するかが見所になっている。しかし本書の場合、主人公がピンチになったときに新たな力に目覚めるなんて安易な方向には流れず、与えられた能力の方向性を的確に切り替えることによって危機を脱している。また、夜が訪れるたびに強制的に夢を見せられ、その夢の中で過去を回想するという二重構造を取っているのだが、その中にミステリ要素が含まれている。誰が誰を殺したのか、それは本当に正しい記憶なのか。――久々に読みながら手に汗を握ってしまい、最後にこんなに本を読んでいて興奮したのはいつだったろうかと記憶を探ってみれば『マルドゥック・スクランブル』を読んでいたときだと思い出した。恐るべし、冲方丁。(富士見ファンタジア文庫)