- 作者: 鳥飼否宇
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2003/09
- メディア: 単行本
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「変態」「擬態」「形態」と舞台は共有しつつも、基本的には脇役である警察を除いて登場人物も事件も交錯しない短編連作。特筆すべきは、第一講と銘打たれている「変態」。これは最高。異常な興奮状態に陥ると天才科学者に変態する助教授が、教え子の性行為を覗くというフィールドワークを行っていたところ殺人事件が発生するのだが、性交渉も殺人事件も何もかもを数学的に解決しようとする姿勢が失笑と苦笑を誘う。舞城王太郎による奈津川四郎や九十九十九をも凌ぐ、迷怪な推理を披露し、しかもそれが的中してしまうのだ! こんなおかしすぎる主人公、他にいない。こんな主人公を描けてしまう作者は、何処か頭のネジが緩んでいるのではないだろうか。
「変態」があまりに面白かったのに対し、「擬態」と「形態」はどこか垢抜けず、無難な印象を受けてしまった。勿論、「変態」のインパクトがなければ、残りの二つも十二分に異常で面白い作品なのだが。