雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

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ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

 第一部が非常に秀逸。中世ドイツの暗鬱で閉塞的な雰囲気や、そこで暮らす、そこで暮らしていかざるをえない者たちの苦悩や葛藤。そういったものが十歳という少女の視点から実に素敵に描かれている。惚れ惚れした。ファンタジィ的な用語の使いまわしやガジェットにも胸が震えた。対して第二部は近未来を舞台に、ライトノベルリアル・フィクションを遠巻きに巡る談議のようなものが繰り広げられる。ダサいが、命名するなら少女論、みたいな感じだろうか。
 問題は第三部。第一部や第二部の主人公は、それぞれ第三部の主人公と出会うことによって生きる力や悩みごとに対する解答を与えられるのだが、果たして彼女自身はどうなのだろうか。何の変哲もない、普通の女子高生として描かれた彼女はタイムトラベルを経て何か変化があったのだろうか。と言うか、そもそも見知らぬ異郷に放り出されてなお生きようとした彼女の生き様を先に読ませられている身としては、彼女がその生涯において特に試練を受けることなく平凡に生きていたというのが拍子抜け。不満が残る。