- 作者: 奥泉光
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/07/10
- メディア: 単行本
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第一章はたいへん面白かった。桑潟幸一助教授こと桑幸の駄目学者が繰り広げる、偏屈で自嘲的な日常は、『四畳半神話大系』を彷彿とさせたが、森見登美彦に比べ奥泉光はまだまだ余裕があるのか随所随所に「こんな技も出来るんだぜ」的な笑いがあって楽しめた。リーダビリティも高かったので読み進めることは、全く苦ではなかった。問題は第二章以降。ミステリが入り、SFが入り、伝奇が入り、不条理が入り、夢落ちが入り、訳が分からなくなるのだ。物語が進むにつれ最高に魅力的だった桑幸が、どんどん脇役に準じていってしまったのが残念だった。また、構造自体も複雑になってきて、文章を追うのは容易だが、展開を追うのが難解という不可思議なる事態に陥った。しかし最終的には、事件はきれいな説明と共に解決されるし、エピローグにおける桑幸の存在も最高。
ただ、もう少し短ければ……。