雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

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館島 (ミステリ・フロンティア)

館島 (ミステリ・フロンティア)

 館! そして島! かつて本書ほどにガジェットに富み、ガジェットだけでしか構成されていないタイトルがあっただろうか。――しかし内容に視線を転ずれば、名前負けしている感も否めない。無人島ではないため島で売るには不充分で、ただ単に六角形でしかないのは館で売るにも不充分だ。事件自体も極めて簡単なもので、見抜くことは容易い。だが、本書は筆致と舞台とに特筆すべきものがある。
 まずは筆致。斬っては返し、持っては回す、奇妙な衒いを含んだ文章が展開されているのだ。読み方によっては西尾維新的とも霧舎巧的とも言えるだろう。しかし、極端に韻を踏んでいるわけでも、命名に独自性を持ちすぎているわけでもないので、多少ユーモアがある、ぐらいだろう。次いで舞台。ミステリ的にはあまり機能していない館と島だが、結末において明かされる真相は、紛うことなく館と島を中心に置いたもの。結末まで読み、このタイトルの本当の意味を理解したとき、穏やかな感情に包まれるだろう。