雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

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生首に聞いてみろ

生首に聞いてみろ

 評判が良かったので発売当初に買ったのだが、様々なランキングの上位を制するのを、つい読む気を失ってしまった。結局、読み終えるのに一年近くかかってしまった……。
 秋山は法月綸太郎の著作を、それほど読み込んでいるわけではないので、鋭いことは言えないが、読みながら感じたのは、この作品は法月にとって集大成的なものではないだろうかということ。『雪密室』的な面もあれば、『誰彼』的な面もあれば、『頼子のために』的な面もあれば、その他の法月作品を思わせる面もある。そうした法月綸太郎を構成している因子を、改めて再結合し、そのそれぞれに強すぎる主張性を抑えるべく、多少の落ち着きと静けさを与える――。読むのを止められない引きとカタルシスとを引き換えに、本書は端整な本格を手に入れたのではないだろうか。
 と、内容はさておき、秋山はこの小説の舞台に最上の魅力を感じた。町田! 鶴川! 相模大野! 玉川学園前! 秋山の私生活がそのまま作中の舞台に取り込まれているのだ。玉川学園前に自転車が乗り捨てられていたと記述があれば、駅前で乗り捨てられそうなところは、あそこかあそこだろうなと。鶴川図書館の近くにある商店街で昼飯をとったと記述があれば、この人物の性格を考慮するにあの店で食べたのだろうなと。皆、もっと町田を舞台としたミステリを書こう。
 もうひとつ、蛇足ながら付け加えておきたい。帯に書かれた有栖川有栖の推薦文が最高「お帰り、法月綸太郎! 名探偵の代名詞よ。」――素晴らしい。