雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

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 悲惨、陰惨、凄惨。どれだけ言葉を重ねても、この過酷な終焉は表現不可能だろう。
 まず、何と言っても世界観および展開が最高に素晴らしい。「夏の区界」と呼ばれる仮想リゾートでAIたちは、ただのひとりのゲスト=人間の訪問も迎えないまま千年を過ごしてしまう。ある日、蜘蛛のかたちをした謎のプログラムが現われ、永遠に続くと思われていた夏休みに翳りが差す――という出だしから始まり、物語の大半はAIと蜘蛛の交戦で構成されている。だが、ああ、なんてことだろうか。その必死の抵抗は無意味なのだと、行間を読めばすぐに分かってしまう。夏の区界の暗部と、蜘蛛たちの不気味な統率者とがちらつき、中盤に散見されるAIたちの勝利は、一時のものでしかないと、どうしようもなく読めてしまうのだ。
 ある種、ステレオタイプな終末風景。死を目前にした最後の、美しく官能的な情交。視覚から侵入し、読者の痛覚を刺激してくる死と破壊。そして全てを許してしまう、頬を撫ぜる夏のそよ風。淫靡なる幻想と透明の破壊に彩られた、極上の冒険小説だ。