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そして名探偵は生まれた

そして名探偵は生まれた

 祥伝社400円文庫から刊行されていた「生存者、一名」と「館という名の楽園で」に、表題作にもなっている「そして名探偵は生まれた」の三作から構成されている短編集。帯には「密室トリック三部作」と書かれているけれど、特にストーリィ的な繋がりはないし、ミステリ史上に名を残すほど密室に特化している訳でもない。秋山は「生存者、一名」も「館という名の楽園で」既読だったので、書き下ろしの「そして名探偵は生まれた」のみ初読みとなった。なので表題作に関してのみ。
 面白かった。帯を見る限りテーマは「雪の山荘」のようだが、どちらかと言うと「名探偵」。探偵論論的な応酬がなされ、タイトルの命名理由が分かった瞬間に感じる感動の波は、冷たいながらも穏やかなもの。ある意味において、後味の悪い作品かもしれない。考えてみれば他の二作も、後味の悪い作品と言えなくもないので、本書は後味の悪い中編ばかりを集めたものと言えなくもない。三作目に収録されている「館という名の楽園で」は、歌野晶午で秋山が一番好きな作品なので未読ならば是非。