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停電の夜に (新潮文庫)

停電の夜に (新潮文庫)

 少しの期待、少しの不安、少しの打算、少しの失望、いっぱいの少しがつくる、本当の現実。どうしてだろうか、ほろりと涙する、感動物ばかりを集めた珠玉の短編集と思い込んでいた。実際、感動的な作品もあるにはあったが、その物語だって、感動的であるだけではないのだ。何故って、本書が描いているのは、どうしようもないぐらいに手厳しい、現実そのものなのだ。現実はやりなおせない、現実はやさしくない、現実は気づかないうちに心を揺るがせている。優しくなければ生きる資格はないかもしれないが、そもそも強くなければ生きられないのだ。この本を読んで、秋山はまた少し強くなってしまった。