雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

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誰のための綾織 (ミステリー・リーグ)

誰のための綾織 (ミステリー・リーグ)

 昨年の半ば、鞘鉄トウさん(id:sayatou)がサイトで取り上げていて、山本タカトのある種、不気味とも言える表紙の魅力に取りつかれた。しかも本書は書き出しが凄い。

 推理小説に禁じ手などあるのだろうか。
 おそらく、ありはしない。
 面白ければそれでいい。

 なんて挑戦的なんだろうか。これはちょっとやそっとの自信がなければ書けないだろう。しかし、飛鳥部勝則の著作には必ず、知識の偏向した登場人物が己の知識をひけらかすようなシーンがあるらしく、それが苦手な秋山は、やや手を伸ばしづらかった。と、そうこうしているうちに盗作疑惑が書評系サイトを席巻し、原書房は本書を絶版にすると同時に回収を始めた。だが、そこで返って話題を呼び、売れてしまうのも皮肉な話だ。
 本編に関しては、まあ、面白かったかな。知識の披露は苦ではなかったが、それぞれの主張を叫びあうシーンには、やや嫌悪感を感じた。仕掛けられている「禁じ手」と作中作の外のトリックの両方も何処かで見たことのあるもので不満が残らないわけでもない。とは言え、ミステリをそう読んでいない人ならば、充分に驚ける範疇である。もう少し古ければ、驚愕を持って迎えられていたかもしれない作品。
(追記)盗作絶版回収に関して、やや間違っていました。詳細は以下をご覧ください。
http://mystery.adam.ne.jp/index.php?no=r28