雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

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天の前庭 (ミステリ・フロンティア)

天の前庭 (ミステリ・フロンティア)

 挑戦したいことは充分に理解できるし、今まで誰も考えたことがないような構造を持つ作品を出したいというのは共感さえする。しかし、幻想小説にも青春小説にもSFにもミステリにも届かない。敢えて言うならば、ほしおさなえという新しいジャンルなのだが、一個のジャンルとするには余りに力不足。
 とにかく書き出しは魅力的なのだ。書き手の分からない謎めいた手記に、白骨死体と日付の刻印されたボールペン。単体なら問題ないが、両方一緒では時間的に不都合が生じる、という実に魅力的な謎が提示されているのだ。この謎を論理的に解決すべく、ドッペルゲンガーやタイムスリップなどが、まるでミステリのガジェットのように取り扱われるのだが、どうしても、弱い。もう少しパンチ力があれば面白いのだが。