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狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

 今年の電撃小説大賞で銀賞を受賞。こんなに面白くて銀賞とは、今年の電撃大賞はどれだけレベルが高いんだ!
 もうとにかく賢狼のホロが魅力的なのだ。狼耳を持った少女の姿に老獪な口調と、分かりやすくも捻った萌えを持っているのだけれど、そんな見せ掛けに頼らなくても十二分に魅力的(こう書くと『GOSICK』のヴィクトリカが連想されるが、ああ言った分かりやすいツンデレではない)。老いているが故に、非常に老練で頼りがいがあり自信に満ち溢れ、そして自分をいかに魅力的に見せるかも知り抜いているのだ。もう骨抜きにされざるを得ない。しかも、存分に賢狼として彼女を立たせた上で、長命な生き物につきものの孤独を描く。堪らないだろう、これは。
 物語も悪くない。主人公が何の後ろ楯もない行商人であるため、明日には全財産を失っている可能性もあり、自らは攻撃に転じることができず、耐えず警戒していなくてはならないという緊張感が凄まじい。戦いのシーンもあるにはあるが、アクセント程度だし。面白かった。最後の一行で明かされるタイトルの真意も素敵だ。
 難点を挙げるなら、前半と後半とでやや物語が有機的に繋がっていないのと、編集の力不足。誤字脱字誤用は目立つし、口絵にするべきでないシーンを口絵にしてしまっていたり、挿絵のタイミングもずれているように感じた。