雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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924『脳髄工場』

脳髄工場 (角川ホラー文庫)

脳髄工場 (角川ホラー文庫)

 小林泰三の久々の新刊。六編の掌編と五編のショートショートから構成されているが、書き下ろしは僅か一作で、他は全て雑誌やアンソロジィなどで発表されたもの。全力で追いかけている人にとっては不満の残る作品集かもしれないが、秋山は『血の12幻想』所収「タルトはいかが?」のみ既読だったので、久々に味わう小林泰三節を陶然と楽しむことができた。
 収録作はいずれもハイレベルで、どの作品も楽しむことができた。角川ホラー文庫から出されているものの、小林泰三の得意とするクトゥルーを彷彿とさせる作品は少なかったように思う。「C市」と「影の国」ぐらいだろうか。「C市」は世界各国の科学者がC市という日本のある市に呼び寄せられ、そこでC(Cthulhuの頭文字)を倒す方法が模索されている。宇宙生命体の超進化形態・異次元知性体の一断面・時間的無限大に位置する究極観測者の探査針・暗在系の非生命反応……Cの正体を巡り交わされる考察の数々と造語の奔流には脳が沸騰しそうな不思議な心地よさがある。表題作になっている「脳髄工場」および「友達」「綺麗な子」といった不気味な諧謔と奇妙な哲学が共存している作品も面白かった。