雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

942『摩天楼の怪人』

摩天楼の怪人 (創元クライム・クラブ)

摩天楼の怪人 (創元クライム・クラブ)

 読み終えた直後は、犯人の演出した一心不乱の大幻想に思わず溜め息が出てしまったが、落ち着いて考えてみれば、いかがなものかと思わないでもない。
 中盤まではしつこさを感じるぐらいに大女優および彼女の住んでいるビルにまつわる謎が語られに語られる。謎の中には、物理トリックを予感させるものから、犯行自体が非常にグロテスクなものや、どうにも興味が持てないものまで揃っており、どんなミステリが好きな人でもそれなりにリーダビリティを高く感じることができるのではないだろうかと思う。そしてうんちくや、てきとうな会話などを経て終章ですべての謎が明かされる。解決編にすべての真相を持ってくる類の作品は、やはり何度、読んでも燃える。本書は特に演劇が扱われているので、謎の解明が極めて格好良く演出されていたように思う。その何処までも単純だがしかし強烈なストレートに打ちのめされ、いいものを読んだという気になる。ここで冒頭に戻る。興奮が醒めると、トリックのトンデモ振りや、意味のなかったミスリードやミスディレクションに首を傾げてしまうのだ。すべての謎や疑問にこれ以上はないという解答を与えられるのではなく、圧倒的な展開で一気に畳みかけ強引に物語を終わらせたのではないか。そう思えてしまうのだ。やや不完全燃焼。