雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

952『ディアスポラ』

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

 読み出したはいいが途方に暮れている文系読者のための『ディアスポラ』攻略法は、しごく簡単。すなわち、「わからないところはばんばん飛ばす」。これだけでOK。隅から隅まで理解しようと脳みそを絞る必要はありません。

 本書はSFのコアなファンから初心者まで、どんなステージに立っている読者でも楽しめると小耳にはさみ、さらに上に引用した大森望の解説にも力づけられたので、気合を入れて読んでみた。「面白かった!」と力説することは出来ないが、けっして面白くなかったわけではない。
 確かに、難解極まる設定と世界観には眩暈を覚えた。巻末の用語解説、大森望の解説、『SFが読みたい!〈2006年版〉発表!ベストSF2005国内篇・海外篇』に収録されているコラムを読んでも、理解できたとは言いがたい。けれど、イーガンが本書で描こうとした、壮大なスケールで展開される世界の危機と、知的生命体との接近遭遇は、なんとか読み取ることができたし、その興奮も何割か引かれただろうが享受することができた。つまり、宇宙船がどうやって飛んでいるのかは分からないけれど、宇宙船が飛んでいることは分かる、という程度に理解できたということ。本書は大半が、宇宙船がどのように航空しているかの説明なので、その部分を理解できていないということは、本書の半分以上と言うか、根底を理解できていないということに等しいかもしれないが、まあ、でも、分かるのだ! なんとなく。
 いずれSFをじっくりと腰を据えて読み、理解し、そこに描かれている世界を想像できうるほどに熟達したら、また帰ってきたいと思う。いつか本書を再読するとき「いままでSFを読んできてほんとうによかった」と思いたいがために、これからSFを読みたいと思う。