雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

966『Sweet Blue Age』

Sweet Blue Age

Sweet Blue Age

野性時代』に掲載された、青春をテーマにしたアンソロジィ。面白い作品が多く、非常に完成度が高い。
角田光代「あの八月の、」これはいきなり傑作。登場する人物は三十代前半と見受けられ、彼らが大学生時代を振り返るようにして、物語がその輪郭を少しずつ明らかにしていくのだが、その見せ方も上手ければ明らかになってゆく過去と、その対比とされる現在がまた上手い。角田光代は雑誌やアンソロジィに掲載された短編しか読んでいないが、もう好きな作家のひとりに加えたいぐらいの傑作。のっけからこういう作品が来てくれると、俄然、やる気が出る。
有川浩「クジラの彼」これも傑作。読みながら、そのあまりのもどかしさにジタバタと暴れまわってしまった。名付けて秋山ジタバタ。有川浩はデビュー作で躓いてしまったのだが、こんなにレベルの高い作品が書けるのなら、積んでいる『空の中』も早目に読むべきかもしれない。
日向蓬「涙の匂い」前二作と比較するとやや落ちるが、それでも及第点を軽々と越える作品。主人公が三十代、二十代、十代と落ちてくるのには、編集の妙も感じる。
三羽省吾ニートニートニートこれは今ひとつか。青春という説明不要な概念を前にして、くどくどと説明してくれているのがやや鼻につく。さらに、どう読んでも長編小説の序章を抜き取ったもの。短編を、もしくは説明を省いて、必要最小限の言葉で読者にメッセージを届けることに慣れていないように感じた。他の作品も読んでみたい。
坂木司「ホテルジューシー」これも中々いい。等身大のリアルタイム青春といった趣きがある。沖縄が舞台であることもあってか、すいすい読める文章に南国の風を肌で受けているような気分になった。良作。
桜庭一樹「辻斬りのように」意外や意外、読む前は期待していた桜庭一樹が一番、駄目だった。辻斬りのように男遊びがしたいという衝動は、実に魅力的だと思うのだが、それが丸っきり調理できていない。著者が桜庭一樹でなければ、もしくはこの良作揃いのアンソロジィに収録されていなければ、それほど悪くない作品だと思う。
森見登美彦夜は短し歩けよ乙女わはは、これ最高。青春とか、恋愛とか、なんかもうそういうのを超越して、森見登美彦が素晴らしい。語り口が『四畳半』よりさらに上達しているので、読みながら何度も噴出したり膝を叩いたりしてしまった。『太陽の塔』も読もうかしら。