雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

973『魔王』

魔王

魔王

 考えろ考えろと主人公は、自らに言い聞かせるが、一体、何を考えているのか。辻村深月の『ぼくのメジャースプーン』では、登場人物が特殊な、他人の行動を制限しうる能力を得たとき、その力に戸惑い、果たして自分はどのようにその力と付き合って行くべきか、向き合い、考え、苦しみ、それで答えを出すのだが、本書の主人公にその苦悩や葛藤は見えない。むしろ嬉々として実験し、そしてどうしてその力を行使するのか、明確に答えを定めぬままに乱発し、暴走し、そしてその果てに……。姉妹編「呼吸」でやや緩和されているものの、本書が何処まで考えて書かれたものなのか不安に思う。「魔王」の結末を以って、自戒としたい。