雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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987『極限推理コロシアム』

極限推理コロシアム (講談社ノベルス)

極限推理コロシアム (講談社ノベルス)

 第30回メフィスト賞受賞作。
 終盤、思わず「うっわー! やっちまったー!」と叫んでしまった。
 著者としては、渾身のトリックだったのかもしれないが、これはフェアアンフェア以前にミステリの文脈に沿っていない。ミステリの文脈と言うのは、つまり普段、ミステリを読んでいる人がどういうタイミングで面白がるかとか、どういうガジェットを面白く感じるか、とか。例えば、多くのミステリで密室が出てくるのは、それがあると読者にミステリを読んでいると感じさせられるからだし、探偵役が容疑者を一堂に集めて演説するのは、それが格好いいから。もちろん、これは極論なので、なんとなくニュアンスを分かって貰えれば、と思う。何が言いたいかと言うと、この作品で使っているトリックはアンフェアギリギリの離れ業*1で、それなりに評価できないこともないのだが、いかんせん、こう、何て言うか、ううん……面白くない! リーダビリティは低いわけではないのだけれど、台詞回しが鼻につくし、結末も『クリムゾンの迷宮』の方が、ずっと面白いし。残念賞!!
(追記)読み返してみたら、思っていたことが上手く表現できていないことに気づいた。ミステリの文脈と言うか、エンターテイメントの文脈、かな。ううん……。

*1:とは言え、同じトリックをもっと巧妙に使っている作品が、本書と同じメフィスト賞を受賞している