雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1176『フリッカー式』

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)

 妹が死んだ。自殺だった。手には一本のビデオテープ。写されているのはレイプされている妹の姿。テープの隣には三枚の紙。レイプ魔の娘の情報が記載されている。さあ、どうするか?
 第21回メフィスト賞受賞作。鏡家サーガ一作目。
 五年ぶりの再読なので結末や詳細は完全に忘れていたが、続く二作目以降の記憶は曖昧ながらも残っていたので、伏線を拾いつつ読み進めることができた。その結果、分かったのは、本書がとても粗削りで、今日の佐藤友哉が持っている才能を見いだすのは極めて困難であるということと、本書を真っ当なミステリと思って読むと駄目だなということ。しかし、リーダビリティはそれなりにあるし、結末で放たれる何重ものどんでん返しには、著者の意欲が見て取れる。しかし、何より本書を読むことで、二作目の『エナメルを塗った魂の比重』や三作目の『水没ピアノ』を読めることを考えれば、本書を読むことによって感じるかもしれない嫌悪感その他は、むしろ慈しむべきものかもしれない。って言うか、ふつうに面白いしね。