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1328『怪奇小説傑作集1』

怪奇小説傑作集 1 [新版]怪奇小説傑作集 1 [新版]
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 怪奇小説というのは、読んだら背筋が凍るような恐い小説のことだと思っていた。しかし、本書に収録されている作品は、いずれも怪奇現象や奇妙な出来事は取り扱ってはいるものの、夜中に手洗いに立てないほどではなく、いや、むしろ全然これっぽっちも恐くなかったと言ってもいいかもしれない。
 全五巻のこの傑作集を、秋山は以下の手順で読んでみた。まず、解説を読む。面白そうな作品の題名を心に留める。頭から読み始める。少しだけ読んでみて、面白くなければ飛ばす。この方法では、真に面白い作品を飛ばしてしまう危険性もあるが、やがて海外作品に慣れたり、古い作品を読む必要性ができたときに再読することで、対処したいと思う。以下、最後まで読んでみて特に面白かった作品。
ブルワー・リットン「幽霊屋敷」タイトルが示すように幽霊屋敷を題材として取り扱っている。人によって見える現象が異なるという屋敷に一泊した主人公は、奇々怪々な出来事に直面する。正直、不可思議な現象がひたすら描写されるだけのページは退屈で、この作品が読み親しまれた時代もあるのだろうと思いながら読んでみたら、中盤以降、まったく予期していなかった方向に物語が進み、仰天した。これはすごい。
W・W・ジェイコブス「猿の手わりと有名な一篇。猿の手と呼ばれるものがどういう効用を持っているかは知っていたが、この物語自体の内容は知らなかったので、なかなか面白く読むことができた。秋山が怪奇幻想アンソロジィの選者になったら、これは是非、選びたい。
E・F・ベンスン「いも虫」十ページほどの短い作品だったので、気軽に読んでしまったのだが、タイトルがはっきりと示しているように、実に生理的に気持ちの悪い作品であった……。
W・F・ハーヴィー「炎天」これは『世にも奇妙な物語』にでも放映されそうな、よくまとまった良質な短編だった。アンソロジィを編むことがあれば、これも収録したい。