雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

痛田三『NesT』



『NesT』
オンライン文芸マガジン『回廊』第12号所収


作者:痛田三
絵師:藤堂桜
分量:原稿用紙70枚
発行日:2007年8月15日
発行元:文芸スタジオ回廊

 夢の中で見る夢……夢中夢、それをよく見る主人公はある日、三重の夢を見た。自らの死を予言してみせたシニアの夢、少女たちのシルエットが障子の浮かぶ夢、今はもう去りしリグレットの夢。憂鬱なまま登校した主人公は、学校でブラザーとビ×チとバカ話にふける。しかし、ビ×チが口にした一言から、その日常まで崩れ落ち始める「その男は予知夢を発見してすぐに死んだの。自分の死を正確に予言してね!」
『回廊』第12号の巻末を飾る読み切り短編。『回廊』では毎号、少し変わった味を持つ、好きなひとは好きだが、嫌いなひとは嫌いと、好みや評価が分かれる作品が巻末に配されるが、この作品も今までの号に負けず劣らず異色作だ。作中において〈夢のマトリョーシカ〉と称される夢中夢を描いた作品なのだが、作品自体が入れ子構造になって最後まで予断を許さない、緊迫感のある仕上がりになっている。特に終盤、ワイフから掛かってくる病的な電話の後の、怒涛の展開には鳥肌がたった。これはものすごい傑作、もしくはB級作品である。痛田三さんに乾杯。また、藤堂桜さんによるイラストも素晴らしい。作品のもつ繊細な狂気を見事に描ききっている。