- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/10/06
- メディア: 単行本
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下手な文学よりも、本書の方がずっとずっと現代的で国際的で、熟読するに値するように感じられた。序盤に配された奇想の真相も確かに驚いたが、どちらかと言うとクロアチア人とセルビア人の争いの方に、より胸を打たれた。1991年というわずか10数年前にこのような悲惨な戦争が起こっていたなど、実に嘆かわしい。
以下、この本を読んだ他のひとの感想。
ミステリーとして十分に面白いが、90年代まで民族同士で殺し合いを続けたこの地域の深刻な歴史が重みを加えている。
http://d.hatena.ne.jp/chiyodaku/20071015
民族紛争に巻き込まれる市井の人たちの描写、虐殺の目撃者の告白がリアルで、良い小説だと思った。
特に「リベルタスの寓話」は濃い。トリックもキレていて良いし、なおかつ全体に仕掛けられたトリックが、作品で描かれるテーマを補強する構成になっているのはなかなかすごい。
http://d.hatena.ne.jp/firstheaven/20071018/1192724119
個人的には手放しで絶賛できないが、総合的には良い本格ミステリなのは間違いない。幻想的な謎と、常に新しいテーマを追求しようという島田荘司の意欲は、相変わらず旺盛である。ここら辺はやはりさすがと言わざるを得ない。既存のファンに限らず、広くおすすめしたい。
http://d.hatena.ne.jp/Wanderer/20071026
ともあれ、本書は島田荘司の目指す方向を確かに感じさせる作品であった。収録された二つの短編では、どちらも最新の科学的トピックスをミステリに取り込んでいる。そうでありながら「リベルタスの寓話」ではその題名の通りリベルタスという架空の寓話を謎の印象を深める為に使い、「クロアチア人の手」では紛争に起因する悪夢を謎の根底に横たわらせている。科学と幻想という二つの要素をどちらも取り込もうという作者の意思が感じられるものであった。
http://d.hatena.ne.jp/architect/20071107/p2