雲上四季

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極限脱出9時間9人9の扉は傑作か駄作か問題

 チュンソフトの新作『極限脱出 9時間9人9の扉』──通称『999』をクリアしました。
 このソフトを手に取った動機は、年末年始を実家で過ごすのにあたり、ネット環境から離れて、2、3日程度でクリアできる、PSPかDSiの、感動的なゲームをやりたいなあと思ったときに目に付いたからです。なにしろ『428 〜封鎖された渋谷で〜』で知られるイシイジロウがプロデュースして、『Ever17 -the out of infinity-』で知られる打越鋼太郎がシナリオを担当しているのです。これが、面白くないわけがありません。
 そんなわけで、帰省する前日に近所のヤマダ電機で『999』を購入した訳ですが……。

極限脱出 9時間9人9の扉

極限脱出 9時間9人9の扉

999は傑作!

 もう、寝食を惜しんでプレイしてしまいましたよ! 最高に面白かったです。
 謎の船に閉じ込められた9人の男女。彼らの左腕は、数字が表示されているバングルが装着されており、彼らの前に待ち受ける9の扉をくぐるものを峻別する。9時間以内に9の扉を通ることができなければ、沈没する船と共に海の底に沈んでしまう……極限状態のなか、果たして9人は待ち受ける謎を解き明かし、無事に脱出できるのか!?
 という内容なのですが、これが、もうとにかく緊迫感を煽ってくれるのです。
 果たしてこの船は何なのか? 9人を船に閉じ込めたゼロとは何者なのか? 船から無事に脱出できるのか?
 そして、この手のゲームのお決まりとして分裂する9人、そして発生する事件。犯人は誰なのか、ゼロは9人のなかにいるのか?
 謎が謎を呼ぶ、と表現するに相応しい、引きの強いストーリィなのです。次から次へと謎が降りかかってきて、真相の一端が見えたかと思うと、その次の瞬間、さらなる謎の深き闇が口を広げている、と。いやあ、面白かったです。

999は駄作!

 と、言うわけでノベルゲームは大変面白かったです。
 DSのスティックペンを駆使させる脱出パートも、やや難易度が高いと思わないでもなかったですが、間違えれば間違えるほどヒントが出てきて、それなりに親切設計ではありました。
 しかし、肝心のところで、このゲームは驚くほど不親切なのです。
 と言うのも『999』というゲームは、マルチエンディングの構造を取っており、計6種類のエンディングがあるのですが、この分岐が極めて……そう、極めて分かりにくいのです。
 ノーヒントでゲームを五周して、6つのエンディングの内、3つしかオープンしか出来なかったときは、もう気が狂うかと思いました。何しろ、スキップが効かないのです。もちろん、いわゆるノベルゲームにおけるCtrl押しっぱなしによる高速文字送りは可能です。しかし、カーソルの右ボタンを押し続けなくてはなりません。いや、これは些細な問題です。高速文字送りが用意されているだけましです。問題は、脱出パートです。脱出パート自体は、驚くべきことにスキップすることが出来ないのです。従って、例えば最初の、主人公が目覚める部屋からの脱出なんて、この秋山、10回は脱出しましたよ。今では目を瞑っていても、正確にタッチペンを動かして、脱出できるくらいですとも!
 そう、このゲーム、ある程度、進めてしまうと、完全なる作業ゲーになってしまうのです。それも、えらく退屈な!! 繰り返し遊ぶことを前提としているシステムなのに、それに耐えられないデザインの、なんと駄目なことでしょうか! こんなのは駄作です!

999は駄作!!

 さらに言うと、以下ネタバレ反転。
 このゲーム、明らかに伏線が回収しきれていないでしょう。
 茜が救われたことによって生じるはずのタイムパラドックスはどうなったのか。現代に存在していた紫の正体は。9年前の実験の結果は。ゼロはいかにしてノナリーゲームを開催できたのか。船長のバングルはどうして6だったのか。ほんとうに紫のバンドルが9で、サンタのバンドルは3なのか。9年前、ネバダにいたはずの四葉は、どうして船が船でないと気づけなかったのか。どうしてこの8人が選ばれたのか(特にニルス、四葉、セブン、八代を選んだ理由)。結局、アリスは……? と言うか、最後のヒッチハイカーは……?
 思い出そうとすれば、もっとありそうな気がします。なんだか咽喉に小骨が引っかかったようで、釈然としません。プレイヤに妄想させる余地を残している、と言えば聞こえはいいかもしれませんが、単に未完成なだけな気もします。不完全燃焼。以上ネタバレ。

999は傑作!!

 とは言っても、やっぱり、何だかんだ言って『999』が面白かったのは、疑いようのない事実です。
 自力で密室から脱出できた瞬間の快感。伏線が回収されていく様子の清々しさ。そして、すぐ背後にまで死が迫っているのではないかというドキドキ。真相が提示されたときの納得感。
 そして何よりも、最後の謎解きのシーン。
 どうしてノナリーゲームが開催されたのかを知った瞬間、脳天から足まで突き抜けた衝撃は、今でも覚えています。こんなにも衝撃的で、感動的な動機は、もしかして初めて知ったかもしれません。それくらいに色々な意味で打っ飛んでいました。この動機だけを取り上げても『999』は最高傑作ですよ。

999の魅力

 もう少し、良いところについて語らせてください。
 このゲームを、シナリオ/キャラクタ/システム/ゲーム性/世界観の5つに分けたとき、それぞれの評価は、こんなような感じになるかと思います。

要素 評価
シナリオ ★★★★☆
キャラクタ ★★★★★
システム ★★☆☆☆
ゲーム性 ★★★★★
世界観 ★★★★★

 前述の通り、シナリオとシステムについては、素直には頷けないところです。
 対して脱出ゲームの面白さとしてのゲーム性と、ミステリとホラーとSFが渾然一体となった世界観は、最高に素晴らしいです。
 そして、キャラクタ……これも、このゲームを語るうえで避けては通れないものでしょう。
 一宮、ニルス、サンタ、四葉、淳平、紫、セブン、八代、9番の男。
 最初に9人のコードネームを見たときは、あまりの多種多様っぷりに、とてもじゃないが覚えられないと思ったのですが、いやいや、そんなことは全然なかったです。9人それぞれに、とんでもなく魅力的なのです。その方向性は、一言で表現すると知的、です。いわゆる、キャラクタ的な、記号的な要素として特徴付けられているのではなく、異なる方向性の賢さを各登場人物は持っているのです。
 例えばセブン。彼は原色の黄色いオーバーオールを着た巨体の男性で、紺色のニット帽を被っています。見た目からは、本能だけで行動する筋肉馬鹿にしか見えないわけですが……終盤に明かされる彼の知性と危機をものともせぬ勇気には、手に汗を握りました。
 セブンでさえ知的に見えるのですから、他の登場人物は尚更です。皆、何らかの知識に長けており、それぞれの知識や経験、能力を以ってして謎に向かい合っていくのです。その様は最高に格好よく、最高に美しいです。

999はお勧めか?

 うーん。
 これは、かなり悩ましいところです。
 上述の通り、ノナリーゲームの動機という、この物語の根幹をなす部分に、秋山は共感してしまったので、最後の謎解きは、それこそ涙を流しながら解いたものです。制限時間などあるわけでもないのに、彼女のために一刻も早く解いてあげなくてはという一心で、必死に頭を酷使してしまいました。
 しかし、冷静に振り返ってみると、おおよそ論理的でないし、現実的でもありません。それが、いいんじゃよ! という見方もあるかもしれませんが。つまりは、そういうことです。そういうところに浪漫を見出せる方なら面白くプレイできるかもしれません。
 単に、脱出ゲームとしても面白いので、DSでミステリしたい! ホラーしたい! という方も、ちょっと遊ぶ分にはいいかもしれません。

最後に

 ここまで書いて気づいたのですが、結局のところ、秋山は、このゲームを良いところも悪いところも含めて、好き、なのだと思います。愛がなくては、こうは書けまい。

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