雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

第2回 One dot contestエントリー作品をプレイしました

 第2回 One dot contestのエントリー作品が公開されていたので、早速、プレイしてみました。以下、寸評。

寸評

もち民A(のっぺり屋)「空の流刑地」イラストがたいへん可愛らしくて、終始、ほえほえ笑いながらプレイしました。舞台が宇宙空間にある刑務所とたいへん魅力的で、謎めいた登場人物たちも実に素敵なのだけれど、終盤の展開が、やや急で勿体なかったような。テーマの消化率は、ちょっと悪かった、かもしれません。
風花の工房「世界救済計画」変態科学者による、世界を救済するという実験。ReadmeにSFギャグや下ネタと書かれていたので、やや警戒しながら読んだものの、そんなに過激なものはなかったです。と言うより、もう少し、手を変え品を変え、変態的なガジェットが飛び出すのかと思いきや、あまり回りくどいことはなく、わりとストレートでした。
七色「彼らの苦悩」これは面白かった! 記号を擬人化した作品なのですが、何と言っても、この着想が素晴らしい。●や×といった記号が、それぞれ苦悩を抱えていて、いやあ、面白かったです。とは言え、中盤以降は最初のインパクトを越えることが出来ず、やや残念でもあります。
タカば(下僕天国)「double パニック!」「俺、好きなコがいるんだ」から始まるラブコメ。「姿形が全く同じ人物を必ず登場させること」という制約のクリア方法もさることながら、選択したテーマも驚きでした。絶対にDの「お互い好きだって何となく分かっているのに告白出来ないままの人達」であろうと思ってプレイし終えてから確認したら Aの「変態科学者」だったのですから。むしろ、ゲーム本編でないところに面白味を抱いてしまいました。
白桃花「RoseRose〜バラ薔薇〜」これは実に怖いですね。終盤の入れ替わりを明かされた瞬間、思わず鳥肌が立ったくらいです。クリア後にメニュー画面の画像が変わっているのも、憎い演出でした。ところでENDと出た後に、フリーズしてしまうのは秋山の環境だけでしょうか……?
月の水企画「G戦場ノ我ラ」タイトル画面で『G線上のアリス』が流れ、ゲーム開始と同時に可愛らしい女の子が現れたときには、ほのぼのとしたゲームかと思いましたが、予想の斜め上を行かれました。まさかGが、あのGとは。そして、まさかの擬人化! いやあ、あれを一瞬でも可愛いと思ってしまうとかありえんわあ〜。
ミニポテト「ランチ・アワー」こ、こわーっ! なんですか、これは!! てっきり激甘ガールズトークかと思いきや、こんな結末が来るとは思いもしませんでした。プレイ後、まさかと思ってテーマを見ると「普通じゃない学園」、なるほど。今のところ、いちばんテーマに則しているかもしれないと深く頷いてしまいました。
はいぺりよん「スワンプマンに花束を」これはやられました! 完全に裏をかかれました。「姿形が全く同じ人物を必ず登場させること」という制限を、真っ向からクリアしながら、それでいて読者の予想を、見事に裏切っています。話それ自体は、そんなに目新しいわけではないですが、最後の一ひねりには、文句なしの拍手を送りたいです。課せられた制約を逆手に取ったという意味では、今のところ随一。
板村唯「ハイノネウタ〜Song with Gray Sounds.」訳が分かりません……。何も考えずに読むと登場人物は6人おり、さらに6人の容姿が似通っているなどといった記述はないので「姿形が全く同じ人物を必ず登場させること」と「登場人物はモブキャラを含めて五人まで」というふたつの制約に反していることになります。しかし、フォルダに同封されていたヒントを読むと、どうやら、そこに仕掛けが隠されている様子です。ぱっと思いつくのは、登場人物の誰かと主人公が、同一人物であるということ。でも、それが誰であるかも、仮に誰かと誰かが同一人物であったとしても、それが何を意味するのか、見当もつきません。しかし、完敗というのも気分が悪いので、少し推理を試みたいと思います。ゲームの最後に語り手が鏡を覗き込むシーンがあります。そこでの描写は、5人の主人公以外の登場人物の内「灰色の髪をした少女」以外の4人の少女の特徴を兼ね備えています。しかしながら、このせかいは、どうしてか全てが灰色に塗り潰されているという奇妙なせかいなので、これはミスディレクションのように思います。5人の少女の内、唯一「灰色の髪をした少女」にだけ、名前が与えられていないのも、返って怪しいです。なので、論理的な理由はありませんが、この少女は候補から真っ先に外したいと思います。さて、残りは 4人です、瀬野ひびき、坂崎瞳、神江曜子、宝田真星。この中で違うだろうな……と思われるのは「目つきの悪い少女」の坂崎瞳です。彼女とは二度も接近しており、明らかに別の存在であるという記述があります。逆に他の3人は、窓ガラス越しの記述が作中に含まれています。「小柄な少女」の瀬野ひびきは自室の窓ガラス越しに、「長い髪の印象的な少女」の神江曜子は教室のガラス越しに、「線の細い少女」の宝田真星はガラス張りの扉越しに。つまり、この3人はガラスに反射した主人公自身であるという可能性がありうるのです。しかしながら、神江曜子は教室内でガラス越しでなく直視していますし、宝田真星とも裏庭で会っています。唯一、直に会っていないのは、幼馴染の瀬野ひびきだけです。特に彼女は、作中の様々な記述から、窓ガラスに反射した主人公自身であるという可能性が示唆されています。……と、言うわけで、いちばん蓋然性が高いのは、瀬野ひびきであるように思うのですが、だからと言って何が起こるのか全く分かりません。秋山はここまでです、誰か代わりに解き明かしてください……。
小倉ハムスター「72」なんや、なんや、いい話やないけ。最初はいきなり下着姿の女性が何人も出てきて、なんだかイロモノだなあと思ったりもしたのですが、終盤の展開は涙なしには読めませんでした。すぐ泣くことに定評のある秋山には、正直、しんどい展開でした。傑作。
インコ「たとえばこんな七不思議」最後の最後に相応しい、気の抜けた明るい作品でした。こういう肩のちからを抜いて、のほほんと読める作品は、やっぱりいいですね。癒されました。

総括

 シナリオが20KB以内という制約があるためか、どの作品もさくさくとプレイできて良かった反面、説明不足だったり、展開が急だったりする作品が目に付いたように思います。それだけ、限られた分量のなかで、物語を締めるのは難しいということですね。
 さて、最後に、特に気に入った作品を3つに絞ってみたいと思います。今回は大賞と、テーマ賞と、制約賞という感じで、別に名誉はないですが、個人的な賞を送りたいと思います。
 大賞は、小倉ハムスターさんの「72」に贈りたいと思います。テーマにきちんと則しているだけでなく、「姿形が全く同じ人物を必ず登場させること」という最も難易度の高い制約を、物語と有機的に絡めることで実現しているのがポイントでした。作者のブログを拝見したら、制約を勘違いしていたという文章があり、振り返ってみると確かに登場人物が6人いるので、ああ、これは失格だと思いましたが、まあ、面白いので問題ありません。本家では失格処分になるかもしれませんが、こんなにも面白いのに「登場人物はモブキャラを含めて五人まで」をちょっとオーバーしてしまったからという理由で失格は忍びないので、この場で称えられればと思います。たいへん面白かったです。
 テーマ賞は選んだテーマとの親和性が最も高いと感じられた、ミニポテトさんの「ランチ・アワー」に贈ります。正直なところ、前半のガールズトークも、後半のキッチュな展開も秋山の好みからは、かけ離れているのですが「普通じゃない学園」を、これ以上はないと言うほどに表現している、その技量には感服する次第です。
 制約賞は八つの制約を見事にクリア……と言うか、逆手に取った板村唯さんの「ハイノネウタ〜Song with Gray Sounds.」に贈ります。や、うえに書いた通り、秋山自身、未だにこの作品を、完璧に理解しきれていないのですが、もう構いません。ここまで何度もプレイさせられ、深く考えさせられた時点で、もう負けを認めます。この作品は素晴らしい! と。

最後に

 と言うわけで、第2回 One dot contestの感想&勝手に授与式でした。
 本家では今月末までを審査期間とし、その後、主催者の二位俊哉さんより優秀賞の発表があります。どの作品が最優秀賞に選ばれるのか、結果が楽しみです。