雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

パブーでダウンロードする、iPhoneで読む

 いつの間にかブクログのメルマガに登録されていて、一読もせずに迷惑メールに放り込むのは忍びなかったので、見たところ、パブーが公開されてから1週間で920作品の登録があったそうです。へぇと思ったので、これを機に、知り合いの作品や面白そうな作品を探して、ちらほらと読んだりしてみました。

プロの作品

 秋山が発見できたところでは『さりぎわの歩き方』でデビューし、『空で歌う』が芥川賞の候補に挙がった中山智幸が2作ほど発表していました。ひとつは短編の『嘘つきの甥』

『嘘つきの甥』
〈物語に書かれた英雄は正直者だが、現実の英雄は嘘をつく。おじさんが昔、そんなことを言っていた。おじさんは嘘つきだった。〉  作家・中山智幸のパブー短篇第1弾。電子書籍に初挑戦。カテゴリは純文だけど、そんなに難しくないよ。きっと。

http://p.booklog.jp/book/466

 もうひとつは鹿児島の地方紙『南日本新聞』に連載していたらしいエッセイの再録『南点』です。こちらは毎週水曜日に更新する、連載エッセイの体裁を取る様子ですね。

『南点』
2010年1月から6月にかけ鹿児島の地方紙・南日本新聞に掲載された文章を、1冊の電子書籍として公開します。全 13回で、毎週水曜日に1本ずつ追加していく予定です。表紙デザインは音の響きと縁起の良い物というところから。

http://p.booklog.jp/book/2934

 ところで、中山智幸作品では「王さま消えたその後で」がたいへん面白かった記憶があって、機会があれば再読したいのですが、いまWikipediaを確認したところ、まだ単行本化されていない模様。残念。
 中山智幸の次に発見できたのは、「超」怖い話などで有名な加藤一こちらは実話怪談を連載しているのかなと思いきや、なんと面白料理話で驚きました。タイトルは『呑食献立 前菜編』、加藤一が独自に開発した料理や、女の子に受けがいいチーズを紹介していたりするのですが、これが実に面白いのです。ePubが公開されていないので、iPhoneに入れることができず、PCでしか読むことが出来ないのが難点ですが、これは一読の価値ありです。

『呑食献立 前菜編』
できるだけ楽にご飯を作るとか、引っ込みが付かなくなっておもしろ半分で作るとか、買って済まそうと思ったらどこにも売ってなかったので仕方なく作るとか、飲み屋やレストランで気に入ったので店が潰れたときに供えて会得するとか、割と前向きではない理由で作られる日々の呑み食いについて。

http://p.booklog.jp/book/2413

人気の作品

 次に、パブーやネットを巡回していて、比較的、人気が高そうだと思われた作品にも手を出してみました。まずは新谷明弘『ダンジョン経済におけるまほうつかいの』これは小説ではなく、マンガです。現代的なファンタジー世界が舞台で、まほうつかいの主人公が他のパーティと組んで、ダンジョンを冒険したりします。タイトルからも分かるように、最近流行のまおゆう的な要素を含んでいて、冒険を時給換算する下りなどは、わりと面白かったです。100円という有料作品ではあるのですが、無料で最後まで試し読みできるのも嬉しいですね。余っているポイントがあれば、読み終えたときにポチッとしてもいいかもと思いました。こういう作品提供形態もありですね。

『ダンジョン経済におけるまほうつかいの』
まほうつかいが、時給の低さについて考えるまんが。有料ですが、試し読みで全部読めます。

http://p.booklog.jp/book/1469

 次は、はてな経由で知った(id:asahi-arkham)、高家あさひ『もし高校図書委員会の副委員長がH.P.ラブクラフトの「文学における超自然の恐怖」を読んだら』あざといタイトルだなあと思いつつも、表紙イラストをCOCOさんが掛かれていたので、きっと面白いSFなのだろうと思って手に取ったら、面白いSFでした。「スーパーナチュラル・ホラー」と「もし高校野球の女子マネージャーがH.P.ラブクラフトの「文学における超自然の恐怖」を読んでいたら」*1の2編が収録されているのですが、前者の方が切れ味があって好きですね。

『もし高校図書委員会の副委員長がH.P.ラブクラフトの「文学における超自然の恐怖」を読んだら』
図書委員会の副委員長と委員会の仲間たちがラブクラフトを読んで甲子園を目指したりはしない青春小説(概要には誇張・虚構が含まれている可能性があります。)(エピソード、表紙絵を追加しました。??2010年6月27日)絵/表紙絵: COCOさん

http://p.booklog.jp/book/1701

怪談の作品

 パブーでは大きく2種類の作品があるように思います。完結させてから一気に投稿された、完結済みの作品と、現在進行形で連載されている、連載中の作品と。特に後者の形態と、原稿用紙にして2枚から3枚程度で出来上がってしまう実話怪談は、親和性が高そうに思います。
 と言うわけで、怪談の作品です。まずは痛田三『魘され草紙』これは「あらかじめ登録しておいたいくつかの言葉をコンピュータによって無作為に抽出」して、3つのキーワードを叩き出して、それをお題に三題噺をするというもので、中々に面白い試みです。著者は『てのひら怪談』にも掲載されたことのある実力者で、どれもレベルが高いです。秋山がいちばん気に入ったのは「悪酔い」かな。

『魘され草紙』
 本作『魘され草紙』は、落語の即興演目である三題噺をもとに怪談を書こうというものだ。

http://p.booklog.jp/book/2676

 怪談という括りでは、もうひとつ見つけました。神沼三平太『怪談とか。粒の掌』百話を一夜として、十夜を目指して、言うなれば千本ノックに挑戦している強豪です。作品は、いずれもTwitterに投稿した作品を、小説のフォーマットに書き直しているもので、元が140字であっただけに改行が多く、ライトな仕上がりです。気軽に読めるのがGood。

『怪談とか。粒の掌』
とりあえず百話行くまでほぼ毎日追加。 つぶやき怪談(http://twitter.com/y1s)で書いたネタを、掌怪談フォーマット(20文字x40行以内)で書き直しています。最新のものから逆走している感じです。

http://p.booklog.jp/book/1490

その他の作品

 最後に、その他の作品として。
 まずは長屋言人『桜山城の姫君』これは面白い! 面白かった……です! イメージとしては、高野和七姫物語』における、敗戦国の姫君をフォーカスした感じです。前半の百合百合しい感じと、後半の……ああっ! 短い作品ですので、これは、ことひとさん(id:kazutokotohito)ファンだけでなく、広くお勧めしたいです。

『桜山城の姫君』
戦国の世に翻弄される、二人の少女。彼女たちが願い、祈る、ある夜の出来事……

http://p.booklog.jp/book/1938

 続いてもう一本、長屋言人『七夕悲恋』3つに分けられた章が、それぞれ序破急と題されていて、意外性のある展開があるのだろうなと思いながら読み始めたら「破」で、いきなりまさかの急展開で驚きました。七夕という題材で、まさか○○○物だとは想像しませんでした。これはいいミスリード。「急」がちょっと失速気味だったのが、残念……。

『七夕悲恋』
七夕──それは、神が罪深きものに赦した、年にたった一度の逢瀬。毎年その日には雨が降る街に伝わる、ひとつの物語。その真実に少年が気がついたその日にも、雨は、降っていた。

http://p.booklog.jp/book/2757

 続いてjoek『折り重なっていく』これは面白かったです、著者は陸条(id:inhero)。手術の日を迎えた少女の一人称語りで、最初から最後まで淡々と描写が積み重ねられ、特に、これといった物語的展開はないのですが、ひとつひとつ丁寧に文字を重ねているのが印象的でした。特筆したいのは、やはり痛みに関する描写でしょう。術後のシーンが痛々しくて仕方がないのですよね、読んでいると背中が痛くなってきました。

『折り重なっていく』
短編

http://p.booklog.jp/book/3305

 もうひとつ、joek『決壊と文学』こちらは読み終えられていません。短い作品がいっぱい入っているのですが、iPhoneに入れてから予想以上にいっぱい入っていたことに気がつき、まだ最初の「叫」しか読めていません。しかし、面白いです。実話怪談に近い趣を漂わせていますが、小説寄りですね。

『決壊と文学』
掌編集

http://p.booklog.jp/book/3298

終わりに

 うむ、パブー素晴らしいです、iBooks素晴らしいです。
 もっと色々な作品があればいいのにと願ってやみません。
 遠慮は不要ですので、このエントリを読んで、パブーに作品を投稿されている方は、トラバを送って下さい。読みます。

*1:それにしても長いタイトルであることよ(詠嘆)。