雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

MYSDOKU05『ジャンピング・ジェニイ』レポ

 と言うわけで、2011年初のMYSDOKUに参加して参りましたも何もスタッフでしたとさ。
 と言うわけで、第5回にして初の海外ミステリでした。課題本はアントニイ・バークリー『ジャンピング・ジェニイ』。2002年の海外本格ミステリベスト10の1位で、2000〜2009年の海外本格ミステリベスト10で3位……だったのかな? 大変、評判がよろしい上に、id:kirisakinekoさんが大★絶★賛だったので課題本になったのですが、いやあ、読めて良かったです。
 読書会の醍醐味のひとつに、自分ひとりで読書道を歩んでいたら、読まなかったであろう傑作を読むことが出来る、と言うのが挙げられると思います。本書は、秋山にとってまさにそれ。特に『毒入りチョコレート事件』が既読であると致命的な勘違いをしていたので、もしかしたら生涯、名探偵(笑)ロジャー・シェリンガムに出会えなかったかもしれません。この幸運に深い感謝を。

ジャンピング・ジェニイ (創元推理文庫)

ジャンピング・ジェニイ (創元推理文庫)

注意

 以下『毒入りチョコレート事件』と『ジャンピング・ジェニイ』の内容に触れます。
 ネタバレには極力、注意しますが、事前知識ゼロで読みたいと言う方は、どうぞ「後で読む」タグをつけたうえで、ブックマークして下さい。

毒入りチョコレート事件

『ジャンピング・ジェニイ』を読む上で、バークリーの代表作と名高い、こちらに着手しました。
 ミステリ系オフでは、チョコレートが出るたびに「毒入りか? 毒入りか?」と騒がれるほど知名度の高い作品で、教養として読んでおくように言われることもある、まさに定番の作品。秋山も読んだつもりになっていましたが……十数ページ読んで、まったくの勘違いであることに気がつきました。
 全体の約7分の1が、毒入りチョコレートを食べて命を落とした哀れな被害者を巡り、事件の概要が語られ、残りの7分の6は、6人の犯罪学マニアが、それぞれの推理を開陳していきます。ひとりが意気揚々と推理を述べる度に、他の探偵によって論破され、また次の推理が披露されます。
 2人目の推理の途中までは、わりと退屈で冗長なのですが、2人目の推理が佳境を迎えるあたりから、俄然ヒートアップし始めます。驚くべき真相(仮)に至った後、それを3人目の探偵が覆すのですが、それがまた予想を遥かに凌駕する、まさに超展開とでも言うべきトンデモ推理で……。
「これは、すごいバカミスだ」なんて言いながら、最後まで一気に読み終えて、目が飛び出しそうになりました。
 もう、その場で正座して、深々と頭を下げたくなるほど感動しました。
 なるほど、これは確かに教養書としてミステリ史に名を刻んでおかしくない本格ミステリですねと心より納得した次第。

ジャンピング・ジェニイ

 そんな感じで「バークリー面白いわあ」とテンション高めに本書に取り掛かったわけですが、いやあ、登場人物が多いこと多いこと。しかも、それぞれが犯罪者や被害者の扮装をしているので、情報が二重に提示され、完全に処理能力の限界をオーバーです。
 けれど、めげずに読み続けていたら、ようやく事件が起こって「あ、倒叙物だったのか」と膝を打ちました(ネタバレ反転)。そこから先は、名探偵(笑)ロジャー・シェリンガムの奮闘を、笑いながら眺めていたのですが、こいつは、もうほんとうに酷いやつですね! 法月綸太郎メルカトル鮎にも、大概うんざりですが、シェリンガムの鬱陶しさは、それ以上でしたよ! グランドピアノの下に潜って、頭をゴンとぶつけてドヤ顔するシーンなんて、憤慨ですよ、憤慨。
 結局、大暴走する名探偵(笑)ロジャー・シェリンガムの勇姿を楽しんでいる内に読み終えてしまい、結末で明かされた真相に呆然としました。
 そのときの感情を一言で表すならば「え?」と言う感じ。
 もう少し分かりやすく表現するならば「倒叙物だと思っていたら、フーダニットだった!?」と言う感じ。

読書会

 読み終えてからスタッフミーティングと会場設営を経て、まだ『ジャンピング・ジェニイ』に対する考えを、まとめられないまま会が始まってしまいました。
 自己紹介では、正直に「本書がバカミスなのか本格なのか、脳内で論争が繰り広げられております」と挨拶。その後は、みんなの意見を聞いたり、時系列順に出来事が丁寧に紹介されているレジュメを熟読しながら、考えをまとめるのに必死でした。
 2時間ほど話し合い、不明点を突付いたり、新たな議題を放り投げたりしている内に、ついに天神どちらさんが、椅子に関する重大な示唆を投げかけられ、その瞬間に秋山内で論争に決着がつきましたとさ。
 MYSDOKUがなければ、そもそも、この傑作を読むことはなかったでしょう。
 仮に読んだとしても、ただの陽気なバカミスとして片付けてしまっていたでしょう。
 会場を後にして、家路につきながら、もう一度、話し合った内容を思い返したりしたのですが、やはり間違いありません。本書は、実に優れたキャラ萌え小説であり、バカミスであると同時に、冷静かつ精緻な眼で読まなければ、読了後に「何が描かれたのか」を理解することも出来ないほど密やかに高潔な、本格ミステリである、と。
 満足。
 おしまい。

おまけ


【ジャンピング】殺害現場を描いてみた【ジェニイ】*1

*1:撮影後に修正しますが、この時点でリリアンは椅子の傍にいるはずでした。