雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

第18回「文学フリマ」の近辺で出会った本について語るときに自分の語ること

 ざっと2ヶ月ほど掛かりましたが、積んでいた同人誌を読み終えたので、その感想です。と言っても、基本的にはすべてTwitterでpostしたものを再編したもになります。後、文学フリマと歌い上げていますが、実際には、ぜんぜん関係ないところで入手した本も含まれています。まあ、近辺ということでひとつ。
 常体と敬体がごっちゃになっていて読みにくいことこの上ないですが、読み終えたときの気分で変えているのでご容赦ください。

感想

鳴原あきら(恋人と時限爆弾)『逢いたい』読了。ふたりの時間を持てない恋人の物語。中盤までは、とにかく苦しくてウンウンと唸るように読んでいて、なんとか急展開が発動しないものか待ち望んでいたところ、終盤は期待通りの展開で喝采。これは良いものです。英訳は、直訳感が半端なく、もっと、どうにか出来たのではと思ってましたが、まさかの"Sorry"と"Gomenasai"の使い分けに目から鱗。面白い試みです。
霜月みつか「のらねこ少年刑事」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。巻頭作でありながら、中々、パンチ力があって良い。学校を舞台としたミステリと言えば、近年では乙一中田永一名義で書いた「宗像くんと万年筆事件」が特に優れていると思う。次点は麻耶雄嵩「バレンタイン昔語り」かな。同人だと、ミステリではないけれど、ピヨヒコ『グリーンピース風邪』が秀作で、だいたいこれらに迫るものを感じました。犯人の意外性もあって、非常に良いと思います。
くりまる「猫カフェ倫敦」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。今までの、くりまるさんの作品で、いちばん好き。と言うのは、前号でも言ったかもしれないけれど、もっと、より好みに近い。雰囲気が良いし、全体的に、ほんわかしていて、こちらが巻頭作でも良かったなと。
業平心「ヤンとラッシー」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。この空気感や喪失感が、とても好き。なんだか、ちょっと昔の小説っぽくて、とても良い。しかし、セックスのシーンは、どうなんでしょうか、これ、どうなんでしょうか。いくらなんでもリアリティが……まあ、そこは主題でないから良いんですけれど。ヤンも猫だったんですね。猫が、そっと去るのは、どの作品を読んでも、とても寂しいです。
添田健一「雪児」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。良いじゃないですか、そえさん。小説があって、歌を詠んで、その歌に意味があるというのは、そえさんの作品に見られるある種のパターンですが、とても良く機能しているように感じました。そえさんの作品だと「長江のうた 星へのたび」が好きですが、あれも最後に歌が出てきましたね。こういう得手とするパターンを、短いながら、技として落としこむところ。好きです。
石井千湖「三月は毛深き黒白のブチを」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。語り口が良いですね。なんだか散歩したくなる文章です。そして、猫の写真もかわいい。かわいい。
伊藤なむあひ「おはなしは夜にだけ」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。雰囲気は抜群に優れていますね。村上春樹アフターダーク』を思い出しました。猫特集の本でない本に載ったら、また違う面白さがありそうに思いました。
山本清風「猫にかまれて」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。滑稽感や気取っているけれど恥ずかしい感のある、戯作家としての清風さんの作品。トンカツかわいい。
栗山真太朗「追うとエスケープ -auto escape-」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。もう完全に、栗山さんと栗山さんの奥さんを想像しながら読んでしまったのですが、あとがきを見たら私小説とあったので、間違ってなかった様子。
なかの真実「化猫になったねこ」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。モフ感パネェ! 向かって右側の描き込みも凄まじいけれど、左側、お腹あたりの描かなさも凄い。描いてないのに柔らかそうに見える。すごい。
伊藤鳥子「ボスとおっさん」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。珍しくファンタジィでない鳥子さん。このお父さんの疎外感が良いです。
永島奈津子「猫伝」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。猫の一人称は面白いし、好きだけれど、難しいですよね。
志方尊志「猫の消失―『吾輩は猫である』の語り」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。しれっと朝比奈みくるキョンが入ってくるのが面白かったです。
ただのデブ「にゃにゃにゃDays」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。顔芸ww もう少し分量が欲しいですね。
三糸ひかり「世界【猫】文学概説」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。三糸さんの謎感、好きです。
有村行人「猫の王、眠りに眠る」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。安定の日常ファンタジィ。途中まで微妙かなと思ってましたが、烏のシーン以降が断然、良いです。
高橋百三「笹かま様」(『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』所収)読了。案外、猫のシーンよりも、お酒を飲むシーンの方が好きだったかもしれません。
伊藤鳥子『絶対移動中vol.15 猫とにんげん』読了。前号と異なり、明るくほんわかとした作品が多いのは、テーマ故かしら。PVのメイキングが面白かったです。組版的には、なむあひさんのが、いちばん雰囲気に合ってましたね。作品の末尾に「了」がないので、けっこうびっくりすること多々。
granat『廃校アンソロジー 卒業式の後 君は』読了。全体的にイメージが異なっていたというのが第一印象。サブタイトルに卒業式というキーワードがあったので、卒業室を終えた直後という時間軸で、複数の参加者が、それぞれのキャラを描くのかなと思っていたら、わりとバラバラでした。大きな物語としては、ちょっと不完全燃焼かしら。複数の話を組み合わせて考えていくと「あ、あれが、あれで、つまり、こういうこと?」みたいな推測は立つけれど、一点突破するようなカタルシスには欠けていたかも。安定して上手いなと感じたのは川獺右端「ねねっちは屋根の上」。うータンさんは、元気な女の子を描くのが上手いですよね。朝昼兼「夢も希望も」は、けっこう厳しいパスだったと思いますが、上手いことボールを受けていて、良かったです。描写力が圧倒的に優れているのは久地加夜子「蝶の舞う日」。蝶の幻想的な羽ばたきもさることながら、根底に横たわる気持ち悪さが半端ない。館山緑「ヨスガの領域」も良いですね。書き慣れているひとの雰囲気が出ています。後、個人的に気に入ったのは、冴神「帰還」です。こういう、大人の会話と言うか、子どもの物語に、大人の目線が入ってくるのって好きなんですよね。宵町めめ「疾走と失踪の記憶」は伏せ字と鉈という小道具が、ひぐらし感ありますね。物語自体は切ない、泣けます。
倉田タカシ『寝言で作ったお酒です。』読了。面白い。悔しいほどに面白い。誰かが「文学フリマは、とりあえず倉田タカシさんのブースに行って、まだ買ってない本があれば、全部、買っておけばよろしい」とpostされていたのを見ました。その通りだと思います。系クリスマスソングと「いつものところ」を見ていて、その繰り返しの妙に、小林賢太郎的な面白味を見出しました。ラーメンズも、忘れた頃にネタを微妙に差し替えつつ、差し込んできて笑わしますよね。言村律広『てきとーの(す)べるせかい』も同様かな。
仁司方(BLEMEN)『銀のタマゴ』読了。ファンタジー短篇集「ドラゴン」VOL.1と銘打たれた短編集で、ドラゴンをテーマとしたファンタジーが3編、収録されていました。見た目はファンタジーでしたが、本質的にはミステリやSFに近しい印象を受けました。巻頭の「Ms.Dragon」は何でも屋が竜の秘密を探るというストーリーですが、これは、完全にミステリではないでしょうか。この世界観における竜が、どういう存在なのか、その竜が、どうしてこんなことをやっているのか。面白かったですね。いちばん分量の多い「Volf the Dragonbane」は正統派ファンタジーと言った雰囲気で、十二分に楽しめました。でも、こちらも亜竜の目的を探るという観点においてミステリ、と言うか探偵物の雰囲気を帯びていて、娼館への潜入捜査はドキドキしました。表題作の「銀のタマゴ」は極めて短かったですが、濃密さで言えば、これが一番かも。終盤の展開が、けっこう怒涛で、特に100ページから先はドーパミンがドバドバ出るほど面白かったです。VOL.2も楽しみです。
仁司方(BLEMEN)『銀ヶ峰の白竜候』読了。ファンタジー短篇集「ドラゴン」シリーズVOL.2と銘打たれた短編集、5作収録。前作『銀のタマゴ』と比較すると、3作から5作なので、作品が短くなって、数が増えました。でも、エッセンスは残っていてお得! だけど、もう少し長いのが好み。前作よりも、だいぶファンタジー寄りされていたのが印象的。何処に驚きが来るのか、どれが伏線なのかを探りながら読んでいたのに、最後まで、ミステリ的/SF的展開が来ないと、何故か勝手にショックを受けてしまうのであった。いちばん好みなのは書き下ろしの「囚われの三文詩人」かな。「百匹目の竜」や「悪党と小悪魔と大悪竜」も好き。表題作も良い。結局、ほとんど良かったということである。
秋月千津子「夏の雪と夏のはなし」(『あるアパートにて、』所収)読了。冒頭に相応しい、読みやすさと物語の完成度を兼ね揃えた一作。アパートの住人との絡みも、満遍なくあって、導入に相応しく、そつなく作り上げているという印象の一品。こういうのがあると、とても安定しますよね。
伽十心「天使の飼育」(『あるアパートにて、』所収)読了。良い。伽十心さんの小説は、読んだことはなくて、朗読を一度、聞いたことがあるだけ。予想より明るくて、エンタメしていて、これが冒頭でも良かったのではという印象。導入編として、出来が優れている2作を巻頭に配置し、まずはワンツー。
泉由良「氷雨の子どもたち」(『あるアパートにて、』所収)読了。と言うか、何度目か分からない再読ですが。山尾悠子の新作が読めると言うのは、我ながら最上の殺し文句のひとつではなかろうか。
白河紫苑「日常の闇底」(『あるアパートにて、』所収)読了。傑作、でしょう。前半の鍋パートは、もう終始笑顔で読んでしまった。男4人が鍋を囲んでいるというだけで幸せな気分になれる。そして後半の超展開。これは熱い。登場したキャラは、既刊にも出るらしいので、買い求めたい所存。
久地加夜子「常世の骨」(『あるアパートにて、』所収)読了。久地さんにしては、ちょっと踏み込みが甘いかなという印象。と言うか、ただ単に、秋山の久地さんに対する期待値が高いだけであったかもしらん。
霜月みつか「今夜、繭を破って」(『あるアパートにて、』所収)読了。261ページからの展開が、とても良い。ここらへんで、グッと好きになった。
秋山写「欠けた月に君を想いて」(『あるアパートにて、』所収)読了。語り手が好き過ぎる。この手の一人称は、もう、それだけで、だいぶ評価が高い。愛らしい。
鳥久保咲人「The last painting」(『あるアパートにて、』所収)読了。白河紫苑さんは別格ですが、なんだかんだ言って、鳥久保さんのが、いちばん面白かったかな。とにかく展開が予想外。どういう結末に転がり落ちていくのか予断を許さなく、最後まで集中力を切らさずに読んだ。
Lumiere『あるアパートにて、』読了。けっこう重厚感がありましたね。読んでみて思いましたが、アパートの見取り図や、登場人物一覧みたいなものがあっても良かったかなと感じました。しかし、良い本だ……。もうひとつ、追加で、ヘッダーに章のタイトルが欲しいなあと言うこと。どこまでがそのひとの作品なのか、一目で分かると良いですね。少し各編において、他の編の語り手が必ず登場するという仕組みは、面白い。頑張ってアパ苦言を呈しましたが、アパートの住民全員と関わろうとするひともいれば、2人で1作を紡ごうとしているひとたちもいて面白い。高峰が登場する度に、ニヤけてしまう。10人の参加した本だけれど、これ1冊で以って鳥久保さんの作品と換言することも出来るなと思いました。きっと362ページから結末に掛けての物語のために、9人は集まったんだ。後、316ページは胸が苦しすぎてやばい。やはり、アパートの住民同士の繋がりが良い。「あっ、あの登場人物が、ここでは主人公になってる。しかも、こんなこと考えてたんだ」とか「さっきの主人公、こっちだとイケメンだw」というのが、とても面白い。結論としては。忘れられないアパートになりました。
氷砂糖「ガラスの小瓶」(『ゆる本 Vol.19』所収)ほんわかとした掌編。黙々と仕事に精を出す主人公の、フラット感に職人の気概が現れていて好印象です。
佐多椋「架空の採集/感覚の簒奪」(『ゆる本 Vol.19』所収)MMORPGっぽい感じだけれど、硬派でもある。「MEDAL OF DOUBLE HELIX / EGOISTIC IMAGINATION CASE.3」を思い出しました。
添嶋譲「ア・リトル・アルケミスト(『ゆる本 Vol.19』所収)結末が、とても好ましい。池田は、いいやつだ。
長屋言人「生命の図書館」(『ゆる本 Vol.19』所収)読了。描写が好み。この手の、秘密めいたふたりの少女という舞台装置そのものが、けっこう好き。
水池亘「パラレル・パズル」(『ゆる本 Vol.19』所収)読了。『幻視コレクション 想い焦がれる追憶の行方』に掲載された「お返しにはペンシルパズルを」のスピンアウト的掌編。合わせて読みたい。グッと来ます。
蒼桐大紀「全自動販売店」(『ゆる本 Vol.19』所収)読了。あおぎりさん曰くSFとのことだけれど、納得。ひとつの未来の形として、なるほどなあ、と。
差分一夜「ネットの向こう側」(『ゆる本 Vol.19』所収)読了。淡々とした描写と、もってまわった迂遠な表現が印象的。やや冗長かもしらん。
添田健一「犬のスケッチ」(『ゆる本 Vol.19』所収)読了。『絶対移動中』掲載作が猫の話だったので、こちらは犬の話とのこと。あわせて読みたい
蒼ノ下雷太郎「さよなら、Detritus」(『ゆる本 Vol.19』所収)読了。これは、わりと面白い。雷太郎さんの作品に見られる自意識・ディスコミュ・異能力バトルは、なりをひそめ、その代わりディストピア世界における政治と芸術の話になっている。清く正しく伊藤計劃以降的な?
雲上回廊『ゆる本 Vol.19』読了。相変わらず多様な作品が収録されていて、この幅広さと言うか、寛容さが面白いです。幻コレのスピンアウトや、絶対移動中寄稿作と対になる作品など、他誌と関係があるところに、文学フリマという場の面白い力を感じます。あおぎりさん曰く実験場、納得です。自分が編集した本なのに、他人事みたく、しれっと感想を書けちゃうところが、これまた『ゆる本』っぽい。
高村暦「返信拒絶」(大坂文庫『あの心地を求めて時速六十キロ』所収)読了。暦さんは期待を裏切らないですね。『受取拒絶』に対するアンサーと聞いていたので、やや構えて読みましたが、悠々と上を行かれました。独自の切り口とうすら寒い展開。鳥肌が立つほど気持ち悪い、良い作品でした。
猿川西瓜「追いかけ記」(大坂文庫『あの心地を求めて時速六十キロ』所収)読了。あんまり、こういうことはネットには書かないのですが、猿川さんは幻コレでお声掛けしたいなと思っていた方のお一人で、名前を見かけた瞬間に「あっ、やられたなー」というのが第一声でした。想像通り、抜群に面白かったですね。なるほど暦さんを巻頭にするか、猿川さんを巻頭にするか悩んで、上住さんは暦さんを採ったか。という印象。こちらの方がよりストレートなので、分かりやすい引きを意識して巻頭かな、秋山だったら。良い作品でした。
稲荷古丹「ADAPT LIKE ANARCHY」(大坂文庫『あの心地を求めて時速六十キロ』所収)読了。特になし。
寄政和之「遠ざかる空」(大坂文庫『あの心地を求めて時速六十キロ』所収)読了。いろいろ惜しい。
ふかやねぎ「マイウェイ」(大坂文庫『あの心地を求めて時速六十キロ』所収)読了。もったいないな、というのが第一印象。編集の手が入れば、グッと良くなるはず。
坂上悠緋「philia」(大坂文庫『あの心地を求めて時速六十キロ』所収)読了。この方向性で攻めるには、読書量が足りていなさそうという印象。
森井聖大「雅子さん愛子ちゃん救出作戦」(大坂文庫『あの心地を求めて時速六十キロ』所収)読了。面白いは面白いが、町田康滝本竜彦ほどではないなと感じた。でも、このふたりと比較し始めている時点で、やっぱり、それなりに面白かったのであろう。好みではないけれど、上手いし、人気ありそう。
上住断靭「あの心地を求めて時速六十キロ」(大坂文庫『あの心地を求めて時速六十キロ』所収)読了。途中から浩太の物語に転じるところが、多分、最大の驚きにして見せ場な気がする。同時代性、共感を煽る内容で、同じベクトルのひとには受けそう。
大坂文庫『あの心地を求めて時速六十キロ』読了後にテーマが「偏愛」だと知って「あ、道理で」と思うなど。もう少し分かりやすく「序」があっても良いように感じました。個人的には、事前にテーマを知っていた方が、そのテーマを意識して読むことができるので。この分厚さの文庫は、良いですね。カバーを掛ければ通勤中にも読めますし、持ち運びにも向いています。後ろ姿で卒塔婆に文字を入れているお姉さんが横顔美人で素敵です。
仁司方『Tails of Dragon's vol.1 ~FireDragon~』読了。これは面白い。生活の中にいるドラゴンというのを、過不足なく描き出して、等身大のファンタジィを実現している。方向的には『魔女の宅急便』かな。魔法を使って宅急便するか、ドラゴンを使って消火するか。仁さんのドラゴンが登場するファンタジィは、ほんと、作品毎に、ドラゴンの役割も位置づけも、ぜんぜん異なるから素晴らしい。きっと、あの全てがドラゴンなのであろう。うーん、奥深いぜ。
打算とも名誉とも無縁なもの『AHNENERBE vol.1 TRPG2051』読了。これは……これは、ひどい。よあけと愉快な仲間たちには、残念ながらブレーキ役が誰一人としていなかったようで「2051年に出版されたTRPG本作ってみようぜ!」「面白そう!」多分、こんなノリだろう。正直、困惑しかない。2051年の立場で、過去を振り返りながら書いているのだけれど、2014年に立っている我々にとっては、現在進行形なわけで、正直、なんで、こんなアホなことをやっているのか意味分からん。収録されている「インタビュー 世界王者の見た風景」は傑作だった。人工知能TRPGを遊ぶ未来世界で、TRPGの世界王者にインタビューしているのだけれど、いきなりガチSFになってビビった。アホか……。このパッケージで、いきなり人工知能物SFを始めて、いったい誰が読むというのか……。TRPGのプロプレイヤーを初代(オリジン)として、二代目が現れるという世界設定も斬新過ぎるけれど、どこへ向かうのか……。と言うわけで「ひどいアホな同人誌を読んでしまった」という虚しさと興奮と憐憫と絶賛はさておき、『ダブルクロス』のリプレイは読んでみたい。
恣意セシル『春の在りか』読了。春をテーマとした3編からなる短編集。「五月」は読んでいる最中に気が付きましたけれど、既読でした。多分、CRUNCH MAGAZINEかパブーで読んだような記憶があります。過去作に比べると、剥き出しのナイフ感は薄れていて、叙情たっぷりで爽やかな印象。収録作の中では「咲かない春」は胸が苦しい感じが好き。
仁司方『Tails of Dragon's vol.2 ~折り紙のドラゴン~』読了。文フリ会場で「これは自信作なので買ってください」と仁さんに言われた一冊。なるほど力作です。話自体は、いわゆる魔人の壺と言うか、よくある系ですが、細部の作り込みとロジックのつけかたが巧みです。全体を支えている補強が、とても良いですね。たとえば折り紙とか、たとえばホムンクルスとか。細やかな気配りが行き届いていて、クライマックスまでの道を自然に盛り上げます。良い短編でした。
仁司方『古き良きDungeon Hackを』読了。激烈に面白かった、間違いなく傑作。人間、エルフ、ドワーフ、ノームといった多種族が、現実に存在する中世ファンタジー世界における、ウィザードリィ的なダンジョン潜りを、これでもかとまでに忠実に書ききった力作。とにかく設定の作り込みが凄い。まるで実在するゲームのノベライズであるかのように、細かい設定が随所随所に出てきて、リアリティを、どんどん高めていく。伝説や、王政への疑問や、種族間の軋轢など、けっこう社会的な要素も多く、読み応えあり。何と言うか「これが読みたかったんだ!!!」感が強い。世界樹好きであれば、終始ウキウキしながら読めること請け負い。いや、素晴らしかった。……惜しむべきは終盤の駆け足だろうか。200ページを越えたくらいから、これ終わるの? と焦る。特に228ページから先は、ちょっと圧縮しすぎで、超展開感ややありけり。もったいない。各章の末尾にあるアイテム紹介も、良い味を出していますね。185ページのとか、239ページのは、特にテンションが上がりますね。
真乃晴花『彼の指すもの』読了。3編の中では「Daemon and Angel」が好きかな。根本的解決にはなってないので、若干、釈然としないものが残るけれど。これを読んで思ったのは、真乃さんは、初野晴カマラとアマラの丘』が好きそうということ。
真乃晴花『ホテル惺明館のお客様』面白かった。こういう話は大好き。誰も彼もが、きちんと救われてゆくのが良いですね。続編が読みたい。
真乃晴花『ホームレスと迷い犬』読了。けっこうズキズキ来る本。後半は、ちょっと泣けてしまう。真乃さんは初野晴が好きそう(2回目
真乃晴花『THE BLACK BOOK』読了。怖かったなあ。2編目の方が怖かったかな。でも、いちばん怖かったのは、あとがきかも。真乃さんは、女の子なのだなあと感じました。
真乃晴花『みらい少女』読了。かわいい。1編目は、ずいぶんとあっさりしたSFだなと思ったけれど、それを受けての2編目が面白い。少女のがんばり空回り感が、よく表現されています。
天ケ瀬幹夫『ふく』(マルカフェ文藝部「おすし企画」)読了。戯曲? それとも台本? オチが分かりやすいなと思っていたら、違うところに仕掛けがあって上手いな、と。
石川友助『こはだ』(マルカフェ文藝部「おすし企画」)読了。小粋な小説ですね。軽快な語り口も心地よく、この企画の中では、一二を争う素晴らしい作品だと思います。
市川すなお『トロステーキ』(マルカフェ文藝部「おすし企画」)読了。やや不完全燃焼、読者の気持ち的にも「さあ、板前長よ、例の台詞を返せよ」という感じだったので、ここからの展開は、やや拍子抜けと言うか「あ、そう」という感じかな。
カフェラテ『たまご』(マルカフェ文藝部「おすし企画」)読了。この、もったいない感……。
鈴木清涜『赤貝』(マルカフェ文藝部「おすし企画」)読了。とくになし。
中川マルカ『サーモン』(マルカフェ文藝部「おすし企画」)読了。これは面白いですね。この企画の中では『こはだ』と並んで、素晴らしいです。目の付け所もさることながら、アイデアを小説の形に落としこむのが、とても良いです。面白いですね。
なかぎりせいじ『いか』(マルカフェ文藝部「おすし企画」)読了。途中までは、どうしたものかと思いながら読みましたが、中盤から乗ってきました。くいくい読ませる感じは、小粋で、寿司という雰囲気にも合っていますね。テーマとの親和性という意味では『こはだ』に次いで良いですね。
もりせいちる『カリフォルニアロール(マルカフェ文藝部「おすし企画」)読了。手馴れているのを感じました、よく書けていますね。惜しむらくは分量が短いことと、お寿司やカリフォルニアロールである必然性が薄いことでしょうか。もっと違う文脈で、もっと多い分量で読みたいです。
マルカフェ文藝部「おすし企画」8冊のコピー誌からなる企画。表紙の紙が、すべすべしていて素敵です。なかの真実さんの絵は圧巻で、特に『サーモン』の描き込みやばいです。『ふく』にマルカフェのロゴが入っているのも、素敵ですね。箱入りで買いましたが、良い買い物でした。
笹山笑『屋根』読了。表紙かわいい、近藤さんかわいい。中盤から予想外の展開で、一気に惹きつけられました。
霜月みつか『バンドバンドバンド』読了。今までに読んだ、みつかさんの作品ではベストかも。「神は死なない」が、いちばん好きかな。バンドと物書きは、少々、趣きが異なるけれど、時間を掛けて、やり続けるのは大変だし、売れていくことによって、人生のステージが分かれてしまうのも切ない。最初の2編は、けっこう物の見方が一辺倒だなと感じたのですが、「神は死なない」は、凄まじい力作ですね。中盤から、切ないなあ切ないと繰り返しながら読んだのですが、ラスト2ページで、またグッと来ます。素晴らしい。
犬尾春陽『スノビズム読了。みつかさんの『バンドバンドバンド』の直後に読んだのですが、2連続で、こう、胸を締め付ける系の作品が来ると、とても辛いです(良い意味で)。犬尾春陽さんの作品は、これと前作しか読んだことがないですが、こちらの方が段違いに好きですね。29ページあたりの展開が、特に神がかっていますね。そうなんですよ、ある一点、分水嶺を越えてしまうと、どんなに自由でありたいと思っていても、もう戻れなくなってしまうんですよ……切ない。
大坂文庫『帰宅したら弟がニート読了。上住断靭「帰宅したら弟がニート」、猿川西瓜「ウエディング」の2作が群を抜いて良いですね。森井聖大「天皇陛下の恋人」も捨てがたいですが。
小辰みなひと『対話篇』読了。最後まで読んでタイトルの真意に気づくなど。全体的に好みですが、文字間が狭すぎて読みにくいことこの上ない。
松本楽志・タカスギシンタロ『蜘蛛の楽器店』読了。楽志さんので、いちばん気に入ったのは「調律」、タカスギシンタロさんので、いちばん気に入ったのは「アコーディオン」。
StORy x TeLLeR『ショート・ショート集〜カラフル〜』読了。タイトルから星新一的なショートショートを期待して読み始めたけれど、そうではなかった。気に入ったのはリドルストーリー感のある「レター・ボックス」と「古書店の安堵」。
風野湊『紙飛行機に眠る月』読了。傑作。裏表紙に書かれた「紙飛行機の墜落率は100%だ」に始まる詩で、読者を惹きつけておいて、どこか物悲しかったり、心を掴む10の掌編は、いずれも清冽で、とてもとても良い。気に入ったのは「新月をグラスに注いで」。特に92ページが良い。後、97ページのあたりも良い。と言うか、全部、良い。何度も泣きそうになったし、結末も素敵だし、この掌編集の中でも、特に光り輝いている素晴らしい作品。他には「父の転生」と「青の国」も好きです。
雪村星依子「紅い瞳の少女座」(ソウブンドウ『非生物少女蒐集箱』所収)読了。星座の擬人化が面白い。イメージが鮮烈。
志保龍彦「空蝉ハ望月ノ雫ニ濡レテ」(ソウブンドウ『非生物少女蒐集箱』所収)読了。ハヤカワSFにありそうな感じ。世界観のわりに分量が少なくて、これは中編以上の設定を、短編に落としこんでいるなあという感触。密度が高くて満足だけど、もったいなさも感じたり。
七木香枝「微睡む糸の昼下がり」(ソウブンドウ『非生物少女蒐集箱』所収)読了。中盤からの展開が、けっこう怒涛。
空木春宵「揺籃ラテルナ・マギカ」(ソウブンドウ『非生物少女蒐集箱』所収)読了。序盤が美しかっただけに、こんなに凄惨な結末に至ろうとは……。美は、狂わす。そういうことかしら。
神尾アルミ「きみの終わりはきっとやさしい」(ソウブンドウ『非生物少女蒐集箱』所収)読了。いや、これは、傑作でしょう。本書収録作の中でベストどころか、歴代のアルミさんの作品の中でも、一二を争う叙情と哀愁の物語と読み解きました。もう、タイトルからして素晴らしいですもの。けっこう、中盤くらいで結末を予感させるので、最後の方の展開は、予定調和感あるのですが、それでも凄い読ませるんですよね。「分かってるけど、そうならないでほしい!」と祈りながら読みました。とても物悲しく、とても切ない。
ソウブンドウ『非生物少女蒐集箱』全体的な感想としては、テーマの難解さ。非生物で、少女で、蒐集だなんて、面白くないわけない! と読む前は思っていたけれど、実際には皆さんテーマに苦心されたのか、若干、振り回されている気配を感じました。イラスト作品や漫画が収録されているのは、良いですね。個人的には、machinaさんの「墓標少女・棺桶少女」がグッと来ました。退廃的です。
佐藤『下』読了。表紙にタイトルが書かれていない作品、上下巻の下巻を読みました。これは、けっこう面白いのでは? 今までの佐藤さんの作品の中では、童話のやつと並ぶ勢いで面白いと感じました。具体的には53ページからでしょうか、襲撃のシーンから、一気に加速しますね。この盛り上がりからの結末への、滑らかな移行が、けっこう美しいのですよね。振り返ってみれば、この結末は、けっこう予期できるものかもしれませんが、てっきり、もっと延々と続くのかと思っていただけに、不意打ちを食らったと言うか、ちょっと涙ぐみました。佐藤さんは、けっこうストイックな方で、黙々と良い小説を書こうとしている方で、実際に、その誠意ある姿勢が評価されているのか、わりと売れているらしいです。一説によると百冊とか。この作品は、そんな佐藤さんの、けっこうな挑戦作で、思い切ったなあと感じました。秋山は、好きです。
ピヨヒコ『そんな未来はもうないよ』読了。『グリーンピース風邪』が面白かったので、ピヨヒコさんのブースにあった本は、全部、買いました。本書は、ちょっと説教感が強いかな。けっこう上から目線で来てました。
ピヨヒコ『コドモドク』読了。狂気の物語。読み始めは微妙感が漂っていたのですが、ねこふんじゃったのあたりから、その圧倒的な狂気が露出し始めて「これはすごいと」と思わず目を覆いました。特に下巻の絶望感が凄絶だと感じました。『グリーンピース風邪』とは方向性は決定的に異なりますが、これはこれで好きです。
ピヨヒコ『犯人は月』読了。読み始めてすぐに「あ、『クレヨン王国』っぽいな」と思ったのだけれど、わりと、最後まで、そんな感じであった。ところで、作中のある登場人物の名前を考えると、犯人は……。
ひではる(文芸サークルPEN-吟)『言葉の断片集5 内燃期間』読了。ちょっと落ち着いた作風になったかな、という印象。飛び抜けて鮮やかなことをやっているわけではないのだけれど「かつてMだったFへ」が好き。しっとりしてます。
富永夏海『赤の素描』読了。『アバカス』が面白かったので買いましたが、同じ人が書いているとは思えないくらい作風が異なっていて、しかし、自分は、こちらの方が圧倒的に好き。装幀も美しい。
LOLLOL 第18号』読了。菊地篤さん、屋代秀樹さん、三上久光さんの掌編。いちばん気に入ったのは、やっぱり屋代さんのかな。おかしい。
木嶋章夫(ストカスト)『夜より深く』読了。良い。言葉が染みこんでくる。とても良い。
今野隼史シュレディンガー・フォークス パラグラフの迷路』読了。これは、かなり面白いのでは? 断片化された世界観に、妙に軽いノリで語りかけてくる謎の存在、サイコロや数値といった面倒のないゲームブック。かなり理想型に近い。色々と謎だなあと思いながら、無理やりに読み進めていたら、意外と最後、丸く収まったり、最後の最後で仕掛けが効いてきたりして、結末が感動的だったりして素晴らしい。以前の作品も気になるけれど、ゲームブックではない様子。
近江舞子『少年』読了。けっこうシンプルな近江さん。根底に横たわっているのは、いつも通りの頽廃や耽美や閉鎖性なんだけれど、「幸せの約束」は、突き抜けるところがあって意外に好み。
『夢束総集編〜Yahoo!グループ卒業記念〜』読了。久々に夢束さんのお名前をお見かけしたと思ったら、YahooのMLサービスが終了ということで、解散? になるのかな、それとも移行? になるのかな。さておき、Yahoo!グループ卒業記念ということで、文集みたいな感じの一冊。夢束さんの本を買うのは3回目だけれど、調べてみたら第3回と第4回のときに買ったので、ざっと10年ほど前。ずいぶん懐かしいです。サービス終了に伴い、活動の場がなくなってしまうのは残念なことですね。気分的には「一回だけ学園祭に遊びに行った学校が廃校することになり、最後の卒業アルバムを読ませてもらった」みたいな感じで、なんだかアンニュイな気分になってしまいます。良い本でした。
吉田悠軋『一行怪談』読了。吉田悠軋さんの作品を、初めて読んだのは2007年かな。てのひら怪談に募集された「通夜」という掌編が、傑作でした。それ以来、もっと吉田悠軋さんの作品を読みたいなあと思っていたら、なむあひさんがコミティアで『一行怪談』をゲットしていて「ずずずるい!」と。シャープでありながら、トリッキィ。わずか一行の作品が、1ページ1作でいっぱい収録されているのですが、さすがにこれだけあれば「うーん」みたいなものも多いのですが、それでも「あたり」の率が高くて、さすがの一言。良い本です。
侘助「刻の彼方より」(『日本史C』所収)読了。日本史は不案内なので、和風ファンタジーみたいな感じで読んでしまいました。個人的には、すごい意外なところで終わっていて「え、ここで終わるの!」となりました。
白藤宵霞「あかのくさび」(『日本史C』所収)読了。おそらく史実では「こう」とされている説に対して、異説をぶつけている挑戦作なのかと思いますが、元々の説が分からなく、さっぱり……。
ななつほしなみ「楽土の幻」(『日本史C』所収)読了。これも多分、日本史が分かっているひとには面白いと思うのですが……思うのですが……。
唐橋史「袈裟を着た人」(『日本史C』所収)読了。これは面白かったです。と言うか、すごいですね。相変わらず、この時代の背景はよく分かりませんが、餓えている感じや、人を騙す感じや、着ているものや格好に皆が騙される感じが、とても良く出ています。この悪事と、それに対する気付き、最終的に与えられる因果応報を思わせる罰は、普遍的なテーマと言えるもので、何と言うか、しっくり来ました。さすが唐橋史さん、素晴らしい。
たまきこう「闇衣」(『日本史C』所収)読了。薬子の変! ようやく聞いたことのある言葉が出てきました。でも、その実態が分からないので、相変わらず雲をつかむような話……。
斎藤流軌「賭射」(『日本史C』所収)読了。面白かったです。謎の鬼との三本勝負。鬼の正体は、さっぱり分かりませんが、文字通り鬼気迫る競い合いは、どこか風流で、和の雅な感じに満ちていました。最後、酒で締めるのもいいですね。心地よい作品だと感じました。
翁納葵「祈りの焔立つ時〜俊寛異聞〜」(『日本史C』所収)読了。まさかの鬼、そして酒というモチーフが連続。「賭射」が面白かったので、好意的に読み始めたのですが、俊寛にまつわるエピソードが多く、俊寛異聞と言われても元々の話が分からないからのう……という感じでした。
緑川出口「おやこ六弥太」(『日本史C』所収)読了。これは、けっこう、面白いんじゃないでしょうか。背景はよく分かりませんが、怪奇幻想として完成度が高いと思います。
すと世界「業火に咲く花」(『日本史C』所収)読了。特になし……かな、よく分かりませんでした。
向日葵塚ひなた「歌え、連ねよ花の笠」(『日本史C』所収)読了。これは快作ですね、すとーん! と突き抜ける、気持ちの良い一作だと思います。歌も良い効果を与えていますね。
上住断靱「銀蛇」(『日本史C』所収)読了。解説が良かったですね。分かった気になれます。
狩野みくず「奥州女仇討異聞」(『日本史C』所収)読了。特になし……かな。
庭鳥「白い脚」(『日本史C』所収)読了。これは、かなり面白かったですね。曽根崎心中は、さすがに知ってますよ。その発端となったエピソードを書いてみた、ということだと思います。物語としても面白いですし、なるほど、あの作品が生まれる背景には、こういう物語があったのかと想像すると面白い。逆説的に、おそらくこのアンソロジーは、元のネタを知っているひとであれば「ああ、あの話を、こう仕上げたのか!」という妙味が多い本だと思います。日本史に精通されている方であれば面白さは人一倍、逆に不案内なひとだと手探りと言うか、見知らぬファンタジーの同等。あるいは、この作品で以って、秋山は初めて『日本史C』を真に楽しめた、と言えるかもしれません。
巫夏奇「二刀流の提灯男」(『日本史C』所収)読了。これも面白かったです。さすがに江戸時代になると、時代小説で触れている世界観なので、親近感がありますね。頭部が提灯になっている提灯男の謎も、良い具合でした。
鋼雅暁「異国の風」(『日本史C』所収)読了。けっこうポップな感じで、読みやすかったです。あれよあれよと物語が進んで、軽快な筆致が楽しめましたが、結末は、ちょっと良く分かりませんでした。
なぎさ「海より深く空より青く」(『日本史C』所収)読了。特になし、よく分からなかったです。
アルト「沼辺に佇む」(『日本史C』所収)読了。これ、めっちゃいいっすねー! これ、いいですねー。原と西園寺の関係が、ちょうグッと来ます。きゅんきゅんしますね。このふたりの会話、もっと読みたい。
保田嵩史「端倪すべからず」(『日本史C』所収)読了。これは、なかなか。まさか、こういう結末になるとは思ってなかったので、意表を突かれました。面白い。
史文庫『すごくあたらしい歴史教科書 日本史C』読了。神話の時代から昭和まで、各時代の小説が順々に並んでいるのは面白かったですね。参加者の性質もあるかもしれませんが、なんとなく平安時代は暗いイメージが多く、江戸時代は飄々としている感じでした。こういうのを味わえるのも良いです。秋山が日本史を知らなすぎることもあって、正直、書かれてあることの、どこまでが「ほんとうの教科書に書かれてあること」で、どこからが「その作者オリジナル」なのかが読み取れず、モヤモヤしました。まあ、勉強せい、ということでしょうか。
兎月竜之介「アリッサの重罪」(『可哀想エンジン』所収)読了。可哀想な女の子が可愛い短編小説集と銘打たれていたけれど、可哀想と言うより、残念な感じでしたね。アリッサ、物事を論理的に考えられる子なのに、心が弱い、もっと上手く立ち回ればいいのに……残念かわいい。
すみやき「わたなべいっけい的限界突破」(『可哀想エンジン』所収)読了。これも、また、残念な感じですね。どこまでが現実で、どこまでが想像なのかは読み取れませんが、ひたすらに落ちていく感じは、もう見ていて「あわわ」でした。救われて欲しい……。ところで、タイトルが意味不明。わたなべいっけい……?
須江岳史「苦花」(『可哀想エンジン』所収)読了。これは、ふつうに完成度の高い幻想小説ですね。最後がちょっとライトな感じですが、個人的には好み。
安房理弘「彼女は炎上させたがる」(『可哀想エンジン』所収)読了。これは傑作……なんですが、いかんせん短すぎるのと、比較的どうでもいいオチで締めてしまっているのが残念極まりないです。ほんとは、もっと長く書けるネタだと思いますが、短編として締めるためには仕方なかったのかもしれません。いわゆる昨今のバカツイッタラー(と呼ぶの?)と、それを拡散して炎上させることの価値を見出している炎上活動=エンカツしている少女との対話なのですが、これが、もうめっちゃくちゃ面白い。だって、エンカツですよ、エンカツ。この時点で発想の勝利ですよ。このスピード感だと、結末をどうするんだろう? と不安に思っていたら、序盤の伏線だけを使った、けっこう無理やりな閉じ方で、この閉じ方がむしろ可哀想だよ! と机を叩きつけたくなる感じ。是非、もっと深く抉りこんでいただきたい。
明日から休講です。『可哀想エンジン』読了。と言うわけで、いつものメンバーによる短編集でした。兎月さんやすみやきさんたちの本は、どれも良いですよ。既刊全買いして良いレベル。本書は第9弾ですが、第1弾から、ずっと良い本です。
二月の鴨「ある国の女王」(『Daisy Chain Vol.14』所収)読了。しっとりとした作品でした。『Daisy Chain』を読むのは初めてでしたが「なるほど、こういう系統なのねー」と思いながら読みました。
瑞穂はじめ「すべて物語のために」(『Daisy Chain Vol.14』所収)読了。こーれーはー、傑作! 傑作でした。物語の登場人物が、続きを書いてもらうために現実世界にやってくるというファンタジカルな導入から、しがらみいっぱいの現実パートへの流れが圧倒的。現実と虚構が入り混じり、混乱し始める中盤の展開が特に良いですね。結末も、けっこうグッと来るもので、どういうオチにすべきか悩んだものと察せられますが、これは……良いと思います! なんとなく三浦しをん『ロマンス小説の七日間』を思い出しました。後、うえお久光『シフト』。
彩世梨緒「ひねくれアリス」(『Daisy Chain Vol.14』所収)読了。好みからは外れるけれど、完成度は高め。良い作品だと思います。
宮野繭子「鼠と夜」(『Daisy Chain Vol.14』所収)読了。これは可能性の塊ですね。正直、これだけだと微妙ですが、すごい爆発力を秘めています。注目したい方ですね。
永岡敬章「下澤屋敷へようこそ」(『Daisy Chain Vol.14』所収)読了。悪くないですね。やや小ぶりかなと思いますが、最後に持ってきて、のんびりと落ち着かせるのに向いてますし、アンソロジーに1編あると安定する作品だと感じました。嫌いじゃないです。
恣意セシル「春萌す方」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。セシルさんにしては、ずいぶんライトな、童話っぽい一編。アンソロジーの冒頭に相応しいやわらかさでした。
猫春「魔女の遺品」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。ジュブナイルっぽい感じ。嫌いじゃないです。
マンノン「北海道中エルボーバイシクル」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。笑った。こういうの大好きです、面白い。
伊織「彗星旅団」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。短い……描写は美しい。
日野裕太郎「明るいところで光る星」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。よく分からなかったけれど、最後まで読んで「あ、そゆことー?」と。
相沢ナナコ「魔女の祝福と人の王」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。特に、どうということもない話ですが、雰囲気は好きです。
R・H・恵賭「ケントと星のコンパス」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。120ページが良いですね、よく考えられた背景だと感じました。
くまっこ「鈴の音の響くところ」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。言葉と世界観が圧倒的。惜しむらくは短いことか……。
なな「宵闇喫茶」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。タイトルが良すぎる。話は、わりとテンプレートだったかな……。
まりも「止まない風」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。雰囲気がとても良いです。物語構造も良く出来ていますが、もう少し文章がこなれて欲しい感じかしら。
久地加夜子「彼女の右手」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。ディテールが、よく出来てます。どうでもいいですが、登場人物の名前が真琴で、ドキドキしました。
高村暦「時計さん」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。タイトルが良いですね。話は……んー、どうかしら。
あずみ「ネヴァーランドのわたしたち」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。ちょっと長めに感じました。中盤がなー。オープニングとエンディングは良かったのだけれど。
みやのはるか「南の空の、冬の三ツ星」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。特になし……かな。
泉由良「指針と羅針」(『廻る針の一夕語り』所収)読了。由良さんの、独自のリズム、良いですね。
蜜丸『カトル・クレール』読了。前作『カトル・セゾン』が面白かったので買ったのですが、こちらの方が面白いですね。男女関係を扱ったものが多く、作風も明るいので、とりあえず読み始めるなら、こっちの方が良いかもしれません。あとがきを読んで納得。喪失に対する葛藤。本書では、悩みつつも決断して、前へと進もうとする人物が描かれるので、それだけで快いですね。
大鴉こう「北欧つばめ」(『京都ジャンクション 第五作品集』所収)よく出来ています。全体的に灰色で、もやっとしていますが、この曇ってる感じ、嫌な気配が立ち込めている感じの表現がとても上手い。
高瀬遊「立派な大人」(『京都ジャンクション 第五作品集』所収)読了。これは傑作でしたね。良い所が多すぎて、ちょっと紹介しきれません。なので、かんたんに紹介しましょう。まず主人公の性格が良いですね。自分を掌握しようという冷静なところが、とても共感を持てます。いわゆる喜怒哀楽が、そのまま分かりやすく提示されることがないので、恋人の大地との関係に違和感を覚えつつも、どうして違和感を覚えるのか、その正体は何なのか。社会人や生きていくこと、といったぼんやりとしたキーワードでは語られますが、その本質には触れられません。会社でのシーンや、恋人が見ている生徒との対話のシーンを経て、両者の立ち位置の違いが、少しずつ浮き彫りになっていく手腕が、とにかく見事です。ありのままに書くのではなく、経緯を、読者に体感、共有させることで、主人公の想いを納得させる。これは、すごいことです。新川先生のくだりも良かったです。生徒に人気のあった先生は、名前が出てこないけれど、新川先生に関しては、すっと名前が出てきている。主人公は、この差について触れませんが、作者は、きっと意図的にやってます。憎いね、このテクニシャン! 77ページからの展開は、特に良いですね。クライマックスに向けて、今までの仕込みを、すべて精算しようとする畳み掛けが怒涛です。特に最後の3行が、とても、とても、とても良い。
濱松哲郎「火」(『京都ジャンクション 第五作品集』所収)読了。前2作が良かっただけに、いかにもトーンダウンを感じてしまう。そもそも文章力が、もう一歩、二歩、三歩……。
安樹茂里「赤い大陸」(『京都ジャンクション 第五作品集』所収)読了。なかなか面白かったです。サウス・アメリカの擬人化が、良く効いています。物語も良いですね。
智東与志文「その暗闇に目が慣れる」(『京都ジャンクション 第五作品集』所収)読了。これも悪くないですね。さっくりとした作りですが、巻末には、これくらい薄いのが良いかもしれません。
『京都ジャンクション 第五作品集 右車線』読了。サークル名が良いので買ってみましたが、予想以上の出来栄えで感動しました。立命館大学の卒業生が中心になっていることもあり、出てくるのは学生だったり、社会人○年目だったり若々しい感じです。このサークルは、今後も買いですね。
七谷はるか「Cantando sotto la rosa」(『卵子血税』所収)読了。サイケデリックなサークル名と表紙に反し、意外にしっとりとした作品。悩める去勢歌手と、若き令嬢の物語。いいじゃないですか。
森久里「海に行く、または倍殺」(『卵子血税』所収)読了。しっとりとした作品から一転、いきなりぶっ飛んだ訳わからん実験小説になって吹き出しました。倍殺という言葉の見た目と響き、インパクトはすごいですね。
風合文吾「虫食ム脳髄」「罪罰輪廻」(『卵子血税』所収)読了。なかなかぶっ飛んだ、一言で言うと「すっげえ」作品。表紙を見たときに「きっと、ぶっ飛んだ作品が収録されているんだろうな」と思ったけれど、まさに予期していた通りの作品であった。
森久里「私が沢山」(『卵子血税』所収)読了。これは良いです、面白い。
呪田獺祭「エログロ(博物館篇)」(『卵子血税』所収)読了。特になし、かなあ。前後にある風合文吾さんが圧倒的過ぎることもあるかも。
少女地獄第九階層『卵子血税読了。サークル名がカッコ良かったので買ってみたけれど、好みからは、やや外れるかな。好きそうなひとはいるので、積極的に勧めてはいきたい。
有本博親『俥畜』読了。面白かったです。角川ホラー文庫風の装幀に、最初から悪趣味な感じがムンムンと伝わってきて「きっと、嫌な話だろうな」と思っていたら案の定。でも、最後には、きっちりと二段落ちを用意していたりして純粋に上手い! とも感じました。
市川純編訳『英国ゴシック文庫「最後の人間」文学集』読了。「最後の人間」と題された二編の詩と一編の散文からなる作品集。好みはトマス・キャンベルの詩かな。エッジが効いてます。19世紀初頭のイギリスで「最後の人間」というテーマが大流行して、同じタイトルで、けっこうな作品が世に出たらしいですね。こういう横串で、編纂するのは尊敬に値する姿勢です。
市川純訳 セアラ・ウィルキンソン著『英国ゴシック文庫4 亡霊』読了。面白かったです。英国ゴシック文庫と聞いて想像していた通りの、古風で、優雅で、仰々しくも物悲しい怪奇幻想でした。
高橋百三・武田若千(温泉卵と黙黙大根)『牧田ノート スクラップブック 58(1)』読了。牧田ノート……? しかも、58巻? こんな同人誌、いつ買ったのだっけかと思いながらページを繰ったら、すごい面白くてびっくりしました。しかし、ほんとうにびっくりしたのは読み終えて奥付を見たとき。著者、牧田さんという謎の人物かと思いきや、百三さんじゃん! 騙された! そりゃ、面白いわけだ!!
平原学『ゴオルデンフィッシュ』読了。テンプレ感ある少女たちの、ケータイ小説的人生。なんか、どの登場人物も仮面を被ってるみたいで、結果的には皆、違うはずなんだけど、皆、一緒みたいな。
佐多椋『超短編集I』読了。だいたい2編か3編に一回のタイミングで「この話、読んだことあるな」という感じで奥付を見て納得。しかし、これだけまとまると、佐多椋さんが、いかに実験的な方向に傾倒しているかが分かりますね。
石川友助「失われた時間」(『棕櫚 創刊号』所収)読了。上手い。見開き2ページと思えないほど濃密。
市川すなお「笑いまち」(『棕櫚 創刊号』所収)読了。これも洗練されていますね。のめりこみました。
カフェラテ「同太郎のお見舞い」(『棕櫚 創刊号』所収)読了。特になし。
鈴木清涜「Kuhleborn」(『棕櫚 創刊号』所収)読了。幻想的で素敵。
中川マルカ「河童のようなもの」(『棕櫚 創刊号』所収)読了。これは、なかなか面白いですね。ゆるふわ怪談と言うか、ほんわか楽しめます。
なかぎりせいじ「五一〇号室」(『棕櫚 創刊号』所収)読了。妙にディテールに凝っていて面白い。
石川友助「灼熱のタンガロア(『棕櫚 第二号』所収)読了。後半の展開は、わりと好き。
市川すなお「シンゴのフリーズ」(『棕櫚 第二号』所収)読了。うーむ、これは、なかなか……良い作品だとは思うのですが、ちょっと余計なところに悪趣味を入れていると言うか、何と言うか。奥深いし、読み込める作品だとも思うのですが、何故、こういう方向性にしたのか……。
カフェラテ「ひらめきまんじゅう」(『棕櫚 第二号』所収)読了。面白い。途中から嫌な予感しかしなくて、結末は気持ちが悪いのだけれど、全体的にテンポが良くて、軽快。
鈴木清涜「燔祭」(『棕櫚 創刊号』所収)読了。これは傑作でしょう。実の娘や息子を犯す男の狂気と、その狂気が継がれていく感じの凄惨さが、とてもハイレベルに表現されています。素晴らしい。
中川マルカ「ザムザ兄さん」(『棕櫚 第二号』所収)読了。ずいぶんとファンタジカルな変身ですね。
なかぎりせいじ「相与田郷ノート(1)『林田 富夫』」(『棕櫚 創刊号』所収)読了。やー、これは切ない。途中までは、どうかなあと思っていたけれど、特に最後の1ページが秀逸。素晴らしい。
上住断靭『忍嚆矢』読了。現実とファンタジーの配分が、ちょうど良いですね。忍者と言えば、山田風太郎だったり白土三平だったりする秋山にとって、あまり派手でない忍術に、リアリティのある描写は、逆に新鮮で面白かったですね。もっと読みたい。
平野智志『豆本読了。手のひらサイズの手製本ではなく、ふつうに印刷所で印刷された文庫本、です。収録されているのは、銀杏や枝豆のように、ちょっとつまむのにちょうど良い小咄56編。堪能。

回廊文庫の宣伝

 おもむろに文学フリマで頒布した雲上回廊の作品へリンクを張っておきます。

幻視コレクション 想い焦がれる追憶の行方

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てきとーの(す)べるせかい

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異界再訪の扉と十三の不思議

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裸の女の肖像

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