雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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ボードゲーム中級者向けに、デザイナごとに色々オススメしてみます

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 たまには、読み物としてボードゲームのエントリでも。
 だいたいボードゲームを始めて1年くらいだとか、遊んだゲームの総数が100を越えたくらいの方を対象に書いてみたいと思います。「経験1年や既プレイ100程度で中級者など失笑である」という諸兄もいらっしゃるかと思いますが、そういうのは新規参入を拒む態度であるように思うので、ここでは敢えて中級者と書いてみました。
 仲間がいないとゲームは遊べないですからね。
 では、ゆるりとどうぞ。

はじめに

 ボードゲームを始めて間もない頃、多くの方は、あんまり良くわからず、誘われたゲームを誘われるがままに遊ぶことになると思います。
 いくつかのゲームを遊ぶ内に、面白かったゲームを買ってみたり、自分でもインストをし始めるようになるかもしれません。そして、もっと面白いゲームと出会うために、レビューサイトを巡回したり、ランキングを検索するかもしれません。
 最初に目を引くのは、目利きがその年いちばんのゲームに与えるドイツ年間ゲーム大賞であることが多いことでしょう。あるいは一般のファンが投票で決めるドイツゲーム賞かもしれません。さとーとしきさんが企画している日本版The One Hundredや、ゆうもあさんの日本ボードゲーム大賞が目につくこともあるでしょう。
 とは言え、ボードゲームに限らず、どんなものでも市場で絶賛されているものが、他の誰でもない自分にとって面白いものであるとは限りません。その事実に気がついたとき「面白かったゲームを作ったデザイナが手掛けた、他のゲームは面白いかもしれない」という考えが宿る可能性は低くないと思います
 と言うわけで、本エントリではデザイナごとに、それぞれオススメの作品を紹介していきたいと思います。紹介するデザイナは、クニツィア、シャハト、クラマー&キースリング、ムーン、ローゼンベルク、フェルト、ボザ、フリーゼ、ワレスです
 中級者以上のボードゲーマーであれば、ここらへんは嗜みとして遊ばれているものと勝手に思っていますが、あんまりまとめて紹介しているブログがなかったことが、今回、取り上げてみようと思った要因です。

ライナー・クニツィア

 ボードゲームのデザイナを紹介する上で、真っ先に取り上げざるをえないでしょう。
 と言うわけで、ライナー・クニツィアです。
 数百と言われる、膨大な量のゲームを手掛けており、傑作と名高いゲームを、いくつもリリースしています。かつては、クニツィアのゲームなら間違いないと言われたらしいですが、秋山が本格的にボードゲームを始めた2010年くらいには、やや劣化したきらいがあり「最近のクニツィアは……」と言われることも多いです*1
 数学博士であり、他プレイヤと何らかの数をやりとりするゲームが多い印象です。また、一時期はクニツィアジレンマなどという言葉が流行って「こちらを取ればあちらが立たず、あちらを取ればこちらが立たず、どちらも選べず苦しい」という要素を持ったゲームが多めです

・クニツィアを語る上で外せない代表的なゲーム:『モダンアート』『ラー』『メディチ』『チグリス・ユーフラテス』『ケルト』『メンバーズオンリー』
・クニツィアを語るなら抑えておきたいゲーム:『インジーニアス』『キングダム』『ロイヤルターフ』『交易王』『ハイソサエティ』『古代ローマの新しいゲーム』『砂漠を越えて』『サムライ』『ボツワナ』『コロッセルアリーナ』『チーキーモンキー』『ノミのサーカス(なつのたからもの)』『ヘックメック』『ペンギンパーティ』『指輪物語 ボードゲーム』『ブルームーン シティー』
・2人用ゲームのクニツィア:『バトルライン』『アンギャルド』『カルカソンヌ ディブルグ』

モダンアート (Modern Art) 日本語版 ボードゲーム

モダンアート (Modern Art) 日本語版 ボードゲーム

ミヒャエル・シャハト

 クニツィア同様に選択のジレンマを感じさせるデザインのゲームを、数多く発表しているデザイナーです、ミヒャエル・シャハト。正確ではないかもしれませんが、クニツィアが面白くなくなってきたタイミングで、シャハトが台頭してきて、ポストクニツィアと呼ばれていた時期もあったとかなかったとか。
 複数人で遊べるゲームでも3人プレイがいちばん楽しかったり、そもそも3人限定のゲームだったり、3人という縛りのあるゲームが多く「シャハトは(テストプレイに付き合ってくれる)友達が2人しかいないのでは?」という笑い話があります。

・シャハトを語る上で外せない代表的なゲーム:『王と枢機卿』『コロレット』
・シャハトを語るなら抑えておきたいゲーム:『ハンザ』『パトリツィア』『ムガル』『セレンゲティ』『ズーロレット』『アクアレット』『ゴールド』

コロレット (Coloretto) 日本語版 カードゲーム

コロレット (Coloretto) 日本語版 カードゲーム

クラマー&キースリング

 正しくはヴォルフガング・クラマーとミヒャエル・キースリングです
 個々に素晴らしいボードゲームも数多く発表していますが、2人が力を合わせた作品は傑作が揃っており、最も人気のあるデザイナと言っても過言ではないでしょう。ボードゲームの王道として、好きなデザイナでアンケートを取ったら、クニツィアとクラマーとで、人気を二分するのではないでしょうか。
 傾向としては、陣取りと呼ばれるメカニズムを持ったゲームが多いように思います。
【追記】見出しはクラマー&キースリングですが、クラマー単独デザインのゲームや、ウルリッヒとの共作にも傑作はあるので、併せて紹介させてください。

・クラマーを語る上で外せない代表的なゲーム:『エル・グランデ』『ハチエンダ』『ニムト』
・クラマー&キースリングを語る上で外せない代表的なゲーム:『トーレス』『ティカル』
・クラマー&キースリングを語るなら抑えておきたいゲーム:『勝利への道』『アサラ』『炭鉱讃歌』『アブルクセン』
・クラマーを語るなら抑えておきたいゲーム:『フォルムロマヌム』『フィレンツェの匠』

Amigo ニムト

Amigo ニムト

アラン・ムーン

 すみません、王道ならクニツィアとクラマーで人気を二分は語弊がありました。ムーンを加えて三分でしょうか。そういう言葉はありませんけれども。
 個人的にムーンのゲームは、見た目の美しさがあって、ゲームを終えたときの盤面が好みと言うのがありますね。自分のコマを、どんどんボード上に配置していくので手を動かす楽しみもあります。
 この記事を書くために、改めてムーンを調べようと思ったら「巡回セールスマン問題」を題材としたゲームが多いというのを知りました。かんたんに説明すると、選択できる複数のルートの中から、最も効率的な最適解を求める……みたいな感じでしょうか。言われてみれば確かに、ですね。

・ムーンを語る上で外せない代表的なゲーム:『チケットトゥライド』『エルフェンランド』
・ムーンを語るなら抑えておきたいゲーム:『ユニオン パシフィック』『サンマルコ』『インカの黄金』『ぼろ儲けカンパニー』

チケット・トゥ・ライド アメリカ (Ticket to Ride) 日本語版 ボードゲーム

チケット・トゥ・ライド アメリカ (Ticket to Ride) 日本語版 ボードゲーム

ひとやすみ

 ボードゲーム上級者たる各位におかれましては「あれがない、これがない」とお怒りの頃合いかと思われますが、敢えて削っているのだと思っていただければ幸いです。すべてをつまびらかに列記してしまっては、かえって探す興が失われるというもの。かゆいところに手が届かない、敢えてそんな感じにしています。
 と、言い訳したところで、ここからはちょっと趣きを変えてみます。
 うがった表現をすれば変態枠でしょうか。ヘビーゲーマーの愛するゲーマーズゲームを手がけるデザイナたちをご紹介します
 断っておきますが、ここで言う変態と言うのは、偏執的もしくは専門的という意味合いで用いており、褒め言葉です。変態とは、ボードゲームに対する偏愛であり、溺愛であり、ときにそれは盲目的なものなのです
 では、どうぞ。

ウヴェ・ローゼンベルク

 変態枠と言いましたが、ローゼンベルクは、そんなに変態じゃないですよね。
 どちらかと言うと、清く正しくヘビーな感じです。
 ドラフトとワーカープレイスメントを組み合わせた『アグリコラ』が、中重量級ボードゲームの代名詞みたいな感じで取り扱われており、ファンも多いです。ゲームマーケットで新作が出れば、わりあいすぐに完売しますし、クニツィアやクラマーが好きな層とは異なるところに、ファンが大勢いるイメージです。
 その一方で『ボーナンザ』や『マンマミーア』のような、従来のボードゲームの流れに乗ったゲームも出しているので、その多才さが窺えます。

・ローゼンベルクを語る上で外せない代表的なゲーム:『アグリコラ』『ボーナンザ』『マンマミーア』
・ローゼンベルクを語るなら抑えておきたいゲーム:『バベル』『ル・アーブル』『洛陽の門にて』『祈り、働け』『カヴェルナ』『グラスロード』『アルルの丘』

アグリコラ (Agricola) (日本語版) ボードゲーム

アグリコラ (Agricola) (日本語版) ボードゲーム

シュテファン・フェルト

 フェルトは、元々、知る人ぞ知るデザイナだったと思うのですが、ここ数年で、面白いゲームを多数発表し、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進しているように思います
 特徴としては、メカニズムてんこもりなデザインでしょうか。ワーカープレイスメントやら、ハンドマネジメントやら、セットコレクションやら、陣取りやら、ダイスやら、とにかく色んな要素を、のべつ幕なし放り込んで、勝利点を稼ぐ方法も目一杯あって、いろんな意味で、デタラメなのに、でもギリギリのところでバランスが調整されており、ゲームとして面白いと絶賛できる出来に仕上がっています。
 とにかく要素が多すぎて、フェルトが好きというひとが3人集まっても「何がいちばん好き?」と聞くと、三者三様の答えを返したりして、そういうのも含めて面白いです。

・フェルトを語る上で外せない代表的なゲーム:『ノートルダム』『ブルゴーニュ』
・フェルトを語るなら抑えておきたいゲーム:『ルナ』『倉庫の街』『トラヤヌス』『ドラゴンイヤー』『ボラボラ』『リアルト橋』『ライスラ』

ブルゴーニュ  Burgundy <並行輸入品>

ブルゴーニュ  Burgundy <並行輸入品>

アントワーヌ・ボザ

 ボードゲーム史の中では『ドミニオン』の次に、一世を風靡したのが『7 Wonders』と思われ、そのデザイナとして知られているかと思いますが、けっこうひどいゲームがいっぱいありますよ。
 日本が好きらしく、日本をモチーフとしたゲームも多いですが『タケノコ』みたいに、ちょっと勘違いしているのもあって、まあ、微笑ましいです。最近は『ランペイジ』や『サムライ スピリット』など、ふしぎな方へと向かっていますが、またいつの日か変なゲームを出してくれることを祈ってます。
【追記】ボザのデザインの特性について、書くのを失念していました。ボザはですね、なんだか変てこな選択をプレイヤに迫るんですよ。クニツィアやフェルトは意地悪な二択を迫る感じですが、ボザは、もっと選択肢が多いです。ざっくり言うと「君には7つの選択肢を与えよう、この中に正解があるとは限らないけどね」みたいな。

・ボザを語る上で外せない代表的なゲーム:『7 Wonders』『花火』
・ボザを語るなら抑えておきたいゲーム:『東海道』『星の王子さま ボードゲーム』『ミステリーエクスプレス』

世界の七不思議 (7 Wonders) 日本語版 ボードゲーム

世界の七不思議 (7 Wonders) 日本語版 ボードゲーム

フリードマン・フリーゼ

 お待たせ致しました、変態の代名詞、我らがフリーゼの登場です
 偏執的なまでに「F」と「緑」にこだわり、デザインするゲームをFで始めたり、箱を緑で塗っていたりしますが、そんなものは外見の問題です。ほんとうに変態なのは、その意味不明なデザイン性です。
 一言で表現すれば「どうしてこうなった」でしょうか、変な題材と変な題材を組み合わせて、面白いゲームを生み出してしまうという困ったデザイナです。その一方で、どう考えても実験作としか思えないゲームもあったりして微笑ましくもあります。
 と、こんな風に書くと、よっぽど変なデザインのゲームばかりなのかと思われそうですが、全然そんなことはないですよ。ときに色物っぽく見えても、その本質は驚くほどゲームです。名言っぽく書いてみましたが、意味が分かりませんね……。

・フリーゼを語る上で外せない代表的なゲーム:『電力会社』『ファウナ』
・フリーゼを語るなら抑えておきたいゲーム:『暗黒の金曜日』『看板娘』『暗闇のフロア』『トリックマイスター』『ビール侯爵』『ファミリア』『袋の中の猫フィロー』『フレッシュフィッシュ』『三戒』『むかつく友達、いきたくないパーティ』

新電力会社 デラックス 完全日本語版 ボードゲーム

新電力会社 デラックス 完全日本語版 ボードゲーム

マーティン・ワレス

 フリーゼが変態枠のボスならば、ワレスは変態枠の大ボスでしょうか
 ゲームを始めるにあたって、いきなり借金をしなければならず開始1秒で苦しみを与えてくるデザイナです。新しいワレスのゲームを買ってきて、コンポーネントの中に黒いキューブがあるのを見つけた瞬間、数分後にその黒いやつに苦しめられることが分かって溜め息が出ます。
 でも、どうして引き寄せられてしまうんですかね。ボードゲーマーの性でしょうか?

・ワレスを語る上で外せない代表的なゲーム:『蒸気の時代』『ブラス』
・ワレスを語るなら抑えておきたいゲーム:『ウントチュース!』『オートモービル』『数エーカーの雪』『P.I.』『ロンドン』『帝国の闘争』

蒸気の時代 完全日本語版

蒸気の時代 完全日本語版

終わりに

 と言うわけで、駆け足でしたが、デザイナごとにばっと紹介してみました。
 機会があればもう少し掘り下げた記事を書きたいですね。
 具体的にはクニツィア、ローゼンベルク、フェルト、フリーゼ、ワレスあたりは面白いはずです。クニツィアはやっぱり歴史があるので、ひとつのゲームを何度もリメイクしたり、リデザインしているので、その微妙な差異を嗅ぎ分けるような楽しみ方が出来ると思います。
 ローゼンベルクとフェルトは試行錯誤のデザイナで、一作ごとに成長や変化が見られるのが興味深いと思います。特に、この2人はランダム性に対するアプローチが、他のデザイナとは一線を画していますね。どんどんアブストラクト化していくローゼンベルクに、ダイスを上手いこと使ったり、ダイスから離れたりするフェルト、とても面白いです。
 フリーゼとワレスは、それぞれに面白いゲームを手掛けているのですが、他のゲームに対するアンサーとも言えるようなゲームが特に関心を惹きます。たとえばデッキ構築という流行のメカニズムに対し、フリーゼが『ビール侯爵』もしくは『フライデー』と反応したのに対し、ワレスは『数エーカーの雪』と反応しています。その時々のボードゲームシーンと照らし合わせながら、各デザイナが、どういう姿勢で、どういうゲームを作ろうとしたのかを考えると、とても楽しいです。
 まあ、そんな側面からの楽しみ方もありますよという提案です。
 良いボードゲームライフをお送りください。

*1:こんなことを書いたら、けがわさんに怒られるかも……。