雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

アジト型の始まりにしてひとつの頂点『謎の部屋からの脱出』は油断できない

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 リアル脱出ゲームの元祖、SCRAPによるアジト型の傑作『謎の部屋からの脱出』の全国再演が発表されましたね。5月に挑戦したので半年ほど前となりますが、再演を祝して感想を書くことにします。ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。

ストーリー

冷たいコンクリートの壁。
置かれているのは机、椅子、絨毯など日常にあるものばかり。
しかし、ここはなにかがおかしい。
そこかしこに暗号や、謎のアイテムが隠されている。
どうやらあなたはこの部屋に閉じ込められてしまったらしい。
ともに脱出するべき仲間は10人。
さあ、あなたはこの謎に満ちた部屋から
脱出することが出来るだろうか?

http://realdgame.jp/event/nazoheya2018.html

脱出率

・挑戦数:27組
・脱出数:13組(48%)

感想

 ちょっと記憶が曖昧ですけれど、確か『謎の部屋からの脱出』って、SCRAPがアジトという常設店を始めるときに、最初のルームとして用意した、アジト型の始まりだったと思います。
 リアル脱出ゲームの難易度は、その性質上、だんだん難しくなっていくものなので、基本的には再演の脱出率は高くなりがちです。なので、初期のイベントである『謎の部屋からの脱出』は、容易に脱出できるのであろう。脱出率もだいたい50%だしね。


 少しでもそう思ったら、絶対に脱出できません。


 むしろ最初期の作品だからこそ、難易度を調整できず、難解な方に振り切られている。そう捉えて、覚悟した方が良いでしょう。
 事実、秋山は閉じ込められてから5分で絶望に囚われました。


 まず、謎が見つからない。


 次に、謎が見つかっても、解けない。


 そもそも解法が分からないし、仮に解き方が分かったとしても、答えを導き出すのに充分なヒントが揃っているのか、それとも、まだ探索が足りていないのか。さっぱり……さっぱり解らないのです。
 とにかく探索力が問われます。
 部屋中をひっくり返し、ありとあらゆるものを、想像しうる限り、ありとあらゆる角度から、じっくりと観察し、何ひとつ見落とさない気持ちで、穴が空くほど見つめる必要があります。この公演ほど、


「そこは、もう調べたので調べなくていいです」


 という言葉が意味をなさない公演もないでしょう。
 10人が10人、隅から隅まで、何度も何度も、繰り返し繰り返し、探索して、それでも充分とは言い切れません。


 と、これだけ書くと探索メインの公演と思われるかもしれませんが、実は探索は必須要件で、その上で謎解き力も求められるんですよねー。
 いやはや、しんどかったです。


 60分の公演の内、45分は探索し続けたような気がします。
 残り10分を切ってトコトコ音が鳴り始めてからですかね、さすがに、もう駄目だと諦めました。いえ、正確には諦めかけました。でも、どうしてですかね、その極限を迎えた瞬間、謎の爆発力が生まれ、いきなり猛スピードで解け始めたのです。
 さっきまで、ものすごい高い壁だと思っていて、絶対に解けるわけがない。そう思い込んでいた諸々が、凄まじい勢いで、するすると解けていって、


「あっ、あっ、これです! これ!」


「あれ! あれ、持ってきて、急いで!」


「できた! できました!!」


 慌てふためくあまり、全員が全員、指示語で話し始めるのですが、そこに至るまでの間に、全員で死ぬほど謎に取り組み、死ぬほど探索してきているので、もう見た瞬間に分かるんですよね。
 電撃的にすべてが繋がり、気がついたら脱出していました。

脱出を終えて

 58分40秒で脱出成功、でした。
 終わった後は、10人ともぐったりしていて、解説を聞くときも、どこか上の空な感じでした。
 疲れたー、という虚脱感と同時に、やったーという達成感と爽快感がないまぜになったふしぎな感覚でした。


 公演の系統としては、ストーリーと言うほどのストーリーはないので、謎と探索に対して真正面から向き合う必要性のある純粋論理な作品でしょうか。ストーリーが余計で、純粋に謎解きを楽しみたいひとにとっては、最も楽しい公演になるかもしれません。