雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

遊ぶことでゲームデザインが変容する『FLEE』が傑作でした


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 エッセン・シュピール2017で購入したフリードマン・フリーゼのFast Forwardシリーズの第3作『FLEE』を遊びました。
 最初に断言すると、2017年に遊んだボードゲームの中ではベスト
 さらには、人生で遊んだボードゲームの中で、ベストテン入り間違いなしの傑作です。
 ゲームとしては、いわゆるレガシー系です。
 コンポーネント破壊はありませんが、番号順に並んだカードを1枚ずつめくっていくので、記憶喪失にならない限り同じように楽しむことは、二度と出来ません
 Fast Forwardは、ルールブックが入っておらず、すぐに遊ぶことができるというアーキテクチャのゲームシリーズだそうです。インスト0分、素晴らしい。カードをめくることで、少しずつルールが増えてくる、いわゆる『アンドールの伝説』に似た形式です。フリーゼの『フルーツジュース』も買ったまま、まだ開封していませんが同様と聞いています。


 レガシー系のゲームですので、説明は、とても難しいです。
 よもするとネタバレに抵触してしまうので、なるべくこれから遊ぶ方の楽しみを奪わないように注意しますが、完全にまっさらな状態で遊びたいという方は、今すぐこのページを閉じた方が吉でしょう。


 さて……。
 では、始めます。


 皆さんは、BakaFire Partyさんの『惨劇RoopeR』というゲームをご存知でしょうか?
 いきなり違う話をぶっこんできやがったな! と懸念されるかもしれませんが、騙されたと思って、どうぞ、読み続けてください。
『惨劇RoopeR』はループ系惨劇体感型推理ボードゲームと呼ばれる4人限定のゲームです。プレイヤは1人が脚本家となり、3人が主人公となり、対決します。脚本家は敗北条件を満たすことを目的とし、主人公は定められたループ回数の中で、脚本家による敗北条件達成を阻止することができれば勝利します。
 長々と説明しましたが、これは『惨劇RoopeR』がオンリーワンのゲームで、ボードゲームの歴史上、他に類を見ない斬新なシステムだから言葉を尽くすしかないのです。
 今でこそ『惨劇RoopeR』を説明するために、様々なキーワードが出てきて、ループ系の一言で済んだりもしましたが、『惨劇RoopeR』が出てきた当初は、


「『惨劇RoopeR』ってどんなゲーム?」


「今までの、どんなゲームとも似ていない、まったく新しいゲーム。遊んでもらうしかない」


 みたいな感じだったのです。
『惨劇RoopeR』の新しさは、今でも突出していて、オンリーワンであり続けているかと思いまし……た。
 過去形で表現した理由はかんたんです。


『FLEE』が現れたからです。


 このゲームもまた言語化が非常に難しいのです。
 レガシー系であり、協力ゲームであること。
 カードをめくることで、次から次へとルールが加わっていくこと。
 ゲームデザインの外側にあるものは、輪郭をなぞるように説明できます。
 でも、


「どこにコア・コンピタンス(強み)が置かれた、どういうデザインのゲームなのか?」


 と聞かれた瞬間に、口をつぐまざるを得ません。


『FLEE』は、言うなれば、発見のゲームです。


 もうひとつ、たとえ話をさせてください。
 たとえば『ドミニオン』の話をしてみましょう。
 初めて『ドミニオン』を遊んだとき、これは買い物が楽しいゲームだと感じました。そして、デッキ構築という言葉に惑わされ、自分のデッキを作るゲームだと捉えました。
 しかし、遊び続けている内に、自分の中で『ドミニオン』というゲームが変容していきました。
 今では『ドミニオン』は、秋山の中では、ドラフトゲームやレースゲームに近しい感じです。他のプレイヤとカードをオープンドラフトし、他プレイヤと点差を保ったまま、ゲーム終了条件を満たす。
 そんなゲームです。


『異郷』以降、『ドミニオン』には触れていませんので分かりませんが、今では、もっと変わっているかもしれません。


 これはネタバレになるかどうかギリギリのラインでしょうけれども……。


『FLEE』は、ゲームデザインが変容するゲームです


 ルールが増えることによって、先程までとても弱く、まったく使い道が見当たらないカードが、急に強くなって見える。
 その程度の変化ではありません。
 カード同士のシナジーだとか、コンボとか、そんなレベルではないのです。
 もっと、根底レベルで、メカニズムレベルで変容するのです
 あるいは、変容ではなく、元々そうだったことに、ゲームを遊び続けている内に気付くことができるのです


 これは、凄まじい経験です。
 言葉にすると、以下の通りです、


「おれは○○というメカニズムのゲームを遊んでいたと思ったら、いつの間にか××というメカニズムのゲームを遊んでいた。何を言っているのか、わからねーと思うが、おれも何をされたか分からなかった。ルール変化だとか、ルール増加だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ」


 ということです。


『FLEE』の日本語版は未発売です、予告すらされていません。
 完全日本語版が出るとすればアークライトでしょうが、『フルーツジュース』も発売に1年を要したので、『FLEE』の完全日本語版が出るのには、少なくとも後1年を待つしかないでしょう。
 言語依存は、非常に強いゲームです。
 全カードに何らかのテキストが書かれており、一部のカードには、びっしりと英文が綴られています。また、平易な表現もありますが、難解な表現もあり、読み解くのにはそれなりのゲーム経験がないと厳しいと思われます。仮に完全日本語版が発売されても、多くのエラッタを覚悟する必要があるでしょう。


 箱にはプレイ時間75分と書いてありますが、秋山はその場で和訳しながらプレイして7時間ほど掛かりました
 そして、7時間遊んだ結果、クリアを断念し、協議終了しました
 箱に書かれているプレイ時間75分は、言ってみれば『パンデミック:レガシー シーズン1』の箱に、プレイ時間約60分と書いてあるのと同じです。もっとも『パンデミック:レガシー』の方は「約60分×12」ですが、『FLEE』において75分を何回でクリアできるかは割愛されています。


 和訳しながらのプレイだったので、余計に時間が掛かりましたが、実際にミスボドで計4組16名に遊んでもらったところ、秋山が4時間かかったところまで、だいたい2時間ほどで到達できていました。
 ゲームが得意なひとであれば3~4時間、不慣れでも5~6時間かければ、充分に『FLEE』の本質を理解し、その傑作性を体感いただけるのではないでしょうか。
 難点は、入手するには輸入するしかないことと、前述の通り言語依存が強いゲームなので、ゲーム英語適性に長けたプレイヤ同士であるか、気合を入れて和訳シールを作り、日本語化をしなければ遊べないことです。


 前述の通り、ミスボドで秋山が隣について、新カードが出る度に、すべて日本語で説明しながら4組16名に遊んでいただきましたが、いずれのケースも3時間以内で協議終了となっています。


「もう遊びたくないです」


「これ以上は考えるのが辛いです」


「オープン会で誘われてやるものじゃない」


 などのコメントをいただきました。
 ただ、その一方で、


「メンバーを選んで、1日中、没頭して遊びたい」


 と言っていただけたり、ある方には、


「『FLEE』が面白かったので、Fast Forwardシリーズの他2作も輸入した」


 と嬉しい報告もいただきました。
 ひとを選ぶゲームであることは間違いないでしょう。
 体感だと『FLEE』を楽しくプレイいただける方は、ボードゲーマーの10%から20%ほどという印象です。
 秋山も遊んだ直後は「これは面白い! 傑作だ!!」となって、つい色々な方を誘ってしまいましたが、今は、少し反省しています。
 ある程度以上のゲームは、誘う相手の適性を見極めなければ不幸になるという原則を失念していました。


 と言うわけで、長々と乱文を書き連ねた次第です。
 いかがでしょうか。
 興味を、持っていただけたでしょうか。
 それとも、ノット・フォー・ミー、でしょうか。


 願わくばひとりでも多くの方が興味を持ってくださって、遊び終えた後に「面白い! 傑作だ!」と叫べる仲間が増えれば嬉しい限りです。