雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

犯人は私たちの誰か『十人の憂鬱な容疑者』の感想

f:id:sinden:20180411194352j:plain
 2018年4月6日より下北沢ナゾビルで始まった、SCRAPのルーム型リアル脱出ゲーム『十人の憂鬱な容疑者』の感想です。ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。

ストーリー

あなたのもとにある日、洋館への招待状が届く。


差出人の名前も書いていないが、あなたはその招待に応じないわけにはいかなかった。
そこには、身も凍るような言葉が書かれていたからだ。
「12年前のことは忘れない。来ないと殺す」と。
あなたは、びくびくしながら、招待された洋館にたどり着く。
そこには、あなたと同じ招待状を握り締めた9人の人物があなたを待っていた。
それぞれが何らかの理由で、この場所に集められたようだ。


全員が揃うと、扉はばたんと閉じる。
そして、スピーカーから声が流れる。
「今日は私の催すパーティーに来てくれて感謝する。
さて、早速だが君たちにプレゼントがある。この謎だ」
「謎を解け。1時間以内に解けなければ殺す」

http://realdgame.jp/ajito/shimokitazawa/event/jyunin.html

概要

この公演は部屋から脱出するタイプの公演とはテイストが少し異なります。
ぜひミステリー小説の登場人物になったような気持ちでお越しください。

http://realdgame.jp/ajito/shimokitazawa/event/jyunin.html

 と言うわけで、いわゆるSCRAPお得意のリアル脱出ゲームとは毛色が異なります。
 かと言って1時間という時間制限はありますし、最大10名1組のチーム戦でもあるので、イーピン企画さんの『ミステリーナイト』のようなミステリーイベントとも異なります。

※同名のゲームブックとは異なる内容のイベントです。

http://realdgame.jp/event/yougisha.html

 こちらは、かつて存在した渋谷ナゾビルで開催された初演からの引用ですが、同名のゲームブック『十人の憂鬱な容疑者』とは、登場人物はもちろん、世界観から何まで、まるっと別物です。予習にはなりえないので、事前に読む必要はありませんが、こちらはこちらで歯ごたえがありすぎるくらい、クォリティの高い謎解きゲームブックなので、未着手の方は、是非、お試しあれ。秋山は、昨年、クリアしましたが、超絶苦戦に見合う傑作でした。

閉じ込められる前

 直近では、名古屋アジトで開催されていた本公演なので、都内で遊べるようになったのは久々のことです。
 個人的には、


「待ってましたー!」


 という感じで、再演が発表されるや否や、申し込みました。
 あんまり情報を仕入れず、「昔の公演だから、ちょちょいのちょいやろ」と肩の力を抜きまくって当日、会場に向かったら、受付前に以前に同じチームだった方とお会いして、そこで初めて難易度は、かなり高いということを聞きました。
 個人的には、少しテンションが上がりました。
 なんでしょう。
 勝手な感覚かもしれませんが、多くのプレイヤが参入し、傾向と対策が講じられた結果、いわゆる熟練者対策が施された最近の公演と異なり、少し古い公演ですので、いわゆる謎の純度が高いのではないかと思ったのです。そんなわけで、少し緊張してから開演を迎えることになりました。

閉じ込められてから

 いきなり変な話をしますが、前説を聞いて、ゲームスタートした瞬間に、脱出の仕方が分かりました。
 ただ、その解法は、かなり邪道と言うか、公演形式を逆手に取った感じで、ちょっと提案するのは憚られました。あるいは10人固めて参加していたら、少し悩んで口にしていたかもしれません。しかし、この日、秋山は2人で参加だったので、口にはしないことにしました。と言うか、邪道と同時に、正道と言うか、美しい解き方も見えたので、他プレイヤと協調しつつ、その美しい解き方をしようと思ったのです。


 序盤は非常に快調でした。
 メンバーに恵まれたのか、スピーディに進み、平均よりも早めに進行させることができた様子です。
 問題は中盤を過ぎてから。
 苦戦しましたね。
 大苦戦。

鍵を開けてもらってから

 突破口は見いだせたものの、結局、最終回答を導くには至らずタイムアップ。残念ながら脱出失敗でした。
 終了後、


「では、どうしていれば良かったのでしょうか?」


 ここからの展開は、ちょっと凄かったです。
 デザインの妙と言うか、作り手の執念と言うか。
 ある種の芸術、美しささえ感じられる謎の宝石だと感じました。
 非常にエレガントです。
 感動しました。


 この、感動は、どうすれば伝えられるものでしょうか。
 秋山は、謎解きにおける謎は、すべて解かれたがっているものだと考えており、解いてあげるのが参加者の役目だと思っているのですが、今回は、解いてあげられてごめんね! みたいなのは感じませんでした。
 なんか、そういう変な感情を抱くことすらできず、ただただ、この謎を、謎として完成させた謎制作者のがんばり、そしてそのアイデアを支持し、公演という形にまで持っていったSCRAP、そして、この公演を現在進行系で開催し続けているアジトのスタッフに敬意を抱きます
 名作と呼ぶに相応しい作品です


 と!
 秋山は思うのですが、あんまり調べていませんが、さっぱり受け付けない。という方も多いのではないかと、勝手に思います。モヤモヤするだとか、これはリアル脱出ゲームではないだとか、メンバーに恵まれなかっただとか。そういう不満は多そう、な気がします。
 ですが!
 この公演は、そういうものじゃあ、ないんですよ。
 この公演は……この、十人で遊ぶ、十人が容疑者となるゲームは、そういうものじゃあ、ないんですよ……。
 敢えて言うと概念。十人の憂鬱な容疑者は、十人の憂鬱な容疑者という概念です

終わりに

 長々と書いたのは、スルメのように味わい深い謎解きだからです。
 個人的にはオールタイムベスト入り間違いなしです。
 この公演が気に入った方は『スカイホープ最後の飛行』も楽しめること請け負いです。感想も書いているので是非。