雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

患者の名はビリー・キール、余命数日『Holding On: The Troubled Life of Billy Kerr』は、まるで長編のイギリス文学のような協力ゲームでした


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 エッセンシュピール2018で購入した『Holding On: The Troubled Life of Billy Kerr(ホールディング・オン:ビリー・キールの苦難)』を遊びました。日本語タイトルは、たった今、勝手に考えました。
 2人から4人用の、シナリオクリア型レガシー系協力ゲームです。

Holding Onについて

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 エッセンシュピール2018で発売される新作を見ているとき、印象的なアートワークだったので、目に止まりました。
 パブリッシャーは、Hub Games。サイトを見ると『Rory's Story Cubes(ローリーズ・ストーリーキューブス)』などを出していたThe Creativity Hubが社名を変えた様子です。所在地は北アイルランドのベルファスト。
 デザイナはMichael FoxとRory O'Connorの2人。後者は、まさに『Rory's Story Cubes』のRoryさんです。
 正直、名のあるパブリッシャーでもデザイナでもないので、外れの可能性はありましたが、ストーリーに惹かれて購入しました。

ストーリー

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 プレイヤは終末期の患者を担当する医師となり、ナースに指示を出しながら患者の心と体のケアをします。ある日、プレイヤの前に現れた患者は、ビリー・キールという名の60歳の男性。シドニーからロンドンに向かう飛行機のなかで、心臓発作に襲われました。彼の余命は残り数日。
 彼が幸せな最期を迎えられるかどうかは、プレイヤたちの献身に掛かっています。果たして、彼が人生に残した「3つの後悔」を、プレイヤたちは救うことができるのでしょうか?

シナリオ

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 ゲームは、全10のシナリオから構成されています。
 シナリオごとに異なる目標が設定されており、シナリオによっては追加のルールや変更があったりします。ゲーム終了条件を満たしてしまう前に、そのシナリオの目標を満たすことができればシナリオクリア、プレイヤは次のシナリオに進む権利を得ます。


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 シナリオを経るごとに、プレイヤはビリーと対話を重ねていきます。
 ゲームのなかで、ビリーの過去は少しずつ明らかになっていきます。彼の子ども時代、青春時代、そして老い、飛行機のなかで心臓発作を起こすまで。ゲームスタート時点、ビリーはプレイヤに心を開いていませんし、彼の記憶はあいまいですが、すべてはじょじょに見えてきます

システム

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 協力ゲームですので、プレイヤ間の競争等はありません。
 このメインボード上にカードを配置し、そのカード上に医師やナースといったワーカーを配置し、ビリーの心と体のケアをすることで、物語を進めていきます。


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 1日は、朝・昼・夜の3つのフェイズから構成されており、1枚ずつ山札からめくっていきます。
 プレイヤは相談して、ワーカーを配置して、ビリーに対して、どう接するかを決定します。体のケアをすれば、ビリーの死へのカウントダウンは一時停滞します。心のケアをすれば、ビリーはプレイヤに対して口を開き、彼の過去について語ってくれます
 ほとんどのシナリオにおける目標は、ビリーの過去を一定量、知ることなので、ゲームをクリアするためには心のケアに励む必要があります。ビリーの寿命が尽きてしまうと、即座にゲーム終了なので、残酷な表現ですが、生かさず殺さずがゲーム的には重要です。

ゲームとしての面白さ

 1回のシナリオのプレイ時間は、平均45分でした。
 最初のシナリオは、英語ルールを解読しながらのプレイングだったので、少し時間が掛かり、10シナリオ全体のプレイ時間では8時間くらいでしょうか
 ゲームオーバーとなった場合は、そのシナリオを最初からやり直す形式ですが、幸いにして全シナリオ、初見クリアできました(第9シナリオと第10シナリオは、けっこうギリギリでした)。
 シナリオによって目標が異なったり、追加ルールがあったりしますが、劇的な違いではなく、中盤は、やや冗長に感じました。物語が魅力的でなかったら、正直、途中で投げていたかもです……。

ストーリーの面白さ

 ストーリーは難解でした
 英語を読み解きながら遊んだのですが、けっこう口語的表現と言うか小説的表現と言うか、見慣れない表現が多く理解に苦労しました。
 また、扱っているテーマや内容が社会派なんですが、日本人には馴染み深いものではなく、途中からはGoogle検索を駆使しながら遊びました。


 特に、終盤、ビリーの真実が明らかになるあたりは怒涛の展開で、けっこうショッキングでした。
 このゲームと直接の関係はありませんが、少し前に遊んだ『My child lebensborn(マイ・チャイルド・レーベンスボルン)』というゲームを思い出しました。戦後のノルウェーが舞台で、ドイツ人の子どもを養子として育てるゲームなんですが、子どもを取り巻く環境が、けっこう苛烈なんですよね。ゲームなので、その子どもは実在しませんが、かつてその地において、そういう現実があったことを考えると、胸が痛くなります。
 閑話休題、この作品も同じで、ビリー・キールという老人はフィクションの存在で、その両親も、妻も、子どもも、旧友も現実に存在したわけではありません。しかし、60年前に生まれた少年が、彼と同じような人生を送っていた可能性は、充分にありうるわけで、ゲームを通して、追体験した60年間という時間とひとりの男の人生は、安易に語れるものではありません。

終わりに

 遊び終えたのは昨夜のことですが、今でもストーリーカードの最後の1枚を思い返すと、涙が出てきます
『Holding On』というゲームは、ただのボードゲームではなく、ボードゲームという形をした小説という印象です。ビリーと過ごした、あの10日間を思い返すと、言葉が出てこなくなります
 言語依存の度合いが非常に高いゲームで、パブリッシャーやデザイナの知名度を考えると日本語版は望み薄です。が! 機会があれば、是非、遊んでいただきたい作品です。


勉強になったね! 面白かったよー、すごい、面白かったよー。ストーリーがね、すべてを説明せずに、遊び手の想像に任せるところが良いよね

ラストの余韻ね。もう呆然としちゃったよ

今回は英語、大変そうだったね

ちょっとねえ、言語障壁は高かったね

楽しいだけのゲームじゃなかったと思う。ああいうゲームこそ、図書館に置いたりして、勉強に使うのが良いよね

いいかも!