雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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JUNK BOX

 綾織燕がまだ駆けだし作家だったころ、彼女は担当編集者から「次に会うときまでに、長編用プロットを最低十作分、作っておいてください」と言われた。
――貴女は次に書く一作を成功させ、その次の一作を書ける権利を得なくてはなりません。そのためには、一作の質を可能な限りなく高める必要があります。候補作が多ければ、その中から選出されることになる一作は、良質なものになると思いませんか?
 疑問に思った彼女の顔を読んだのか、編集者は理由をすらすらと述べると「では、仕事が残っていますので」と言って、帰っていった。
 家にひとり残った燕は、編集者の言葉を何度も何度も反芻し、それから長編小説十作文のプロットを、時間をかけて作った。
 彼女が小説家として道を歩き続けるために、今に至るまで行ってきた努力はこれだけではないが、このとき編集者の言葉に従ったことが、自分を今に導いた、と彼女は疑っていない。ジャンクボックスに放りこまれた無数の作品群が、世に出された綾織燕の傑作を支えている……。


……だからと言ってこの一篇がジャンクボックス行きとは豈図らん。なんちゃって。*1


『ジャンクボックス』477文字

*1:この一篇が書かれた当初、一定水準に届かない超短編はジャンクボックス=未収録作品集として公開される予定だった