目を醒ました女は、何処かに立っていた。
それが何処かは判らない。ただ、何処かは判る。いや、そうではなく。
つまり。それが具体的な何処かは判らないが、少なくとも何処かであることは、頭で判っていた。
もっとも、だからなんなのだろうか。
自分が何処かにいることは当たり前だ。生きているにせよ死んでいるにせよ。
何処かにいるのならば、それは何処かなのだろう。それが何処であろうと関係ないはずだ。
では、なぜ。
女は戸惑い、周囲を見回した。
周囲には何の特徴もなかった。明るいのかもしれない、暗いのかもしれない、広いのかもしれない、狭いのかもしれない。女には何も判らなかった。
見えないわけではない。目は見える。手を伸ばすこともできるが、何もない。
足は確かに地面を感じている。でも、判らない。
何が判らないかも判らない、自分が何処にいるのかも。何処から来たのかも。
判らないまま、女は目を瞑った。そしてそのまま考えることをやめた。
世界が終わった。