雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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CARNIVAL

「祭りは準備している間が楽しいなんて誰が言った! 祭りの間が一番楽しいに決まってるじゃねえか! なあ、お前らもそう思うだろう!!」
 片手を振りあげ、体育館の壇上の剣華極上衛門は大声を張りあげた。
 彼の叫びに呼応するかのごとく会場から悲鳴、絶叫、怒号に黄色い声が上がった。
「よっしゃぁっ! お前らいい度胸だ。お前らの挑戦! この俺が受けてやろう。倒されたい奴から、掛かってきな!」
 極上衛門が中指を天に向けると、会場で今か今かと待っていた学生たちは、先を争うかのごとく壇上の極上衛門へ向けて駆けだした。しかし、壇上へ上がるのに使う階段の前には、四天王が待ち構えている。彼らの喧嘩の腕は、極上衛門と比べても遜色がない。学生たちは飛んで火に入る夏の虫がごとく、四天王に蹴散らされた。
 カーテンやバスケットボールのゴールを伝い、壇上に飛び降りた果敢なる学生もいた。奇策は確かに彼らを四天王と相見えることなく、壇上へと導いたかに見えたが、着地の寸前に極上衛門に蹴り飛ばされ、体育館の反対側にまで吹き飛ばされることとなった。
 何人も壇上に上がらせることなく終結すると一時は思われた激闘だったが、四天王の一角が敗れたことで急変した。学生たちは競い争うかのようにたったひとつの入口に突入し、極上衛門との謁見と、そして対戦に臨んだ。
「覇ッ!!」
 壇上に足を掛けたひとり目は、極上衛門の一喝だけで後続の学生を何人も巻きこんで吹っ飛んだ。その僅かな瞬間だけ、極上衛門から会場の反対側まで一直線に、人のいない空間が完成した。
 極上衛門は見る。体育館の反対側に数人の男女が、不敵に微笑んでいるのを。彼と四天王の宿敵にして強敵が、雑魚の後ろでその出番を待っているのを。彼らはすぐに見えなくなった、学生たちが再び壇上に殺到したのだ。極上衛門は彼らに構うことなく、のんびりとした動作で身を屈めると、一足飛びに配下の四天王と雑魚を飛び越えた。
 ダン! と体育館を震わせて彼が立ったのは、宿敵たちの目の前。彼らの何人かは極上衛門の突然の行動に驚き慄いていたが、残りの何人かは平然と佇んでいた。
「上等だ。俺の最強っぷりを見せてやる」
 後ろ手に雑魚をひとり捕まえ、それを敵への餞とし、極上衛門は吼えた。
 狂乱の宴は、始まったばかりだ。


子午線の祀り960文字