雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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BOOBY TRAP

 どんよりとした雲に白い息を吐き出して。
 それから思い出したように血塗れのナイフを、雪の中に投げ捨てた。――が、すぐに拾いあげて、ポケットから取り出したハンカチで握りの部分をたんねんに拭いた。
 目の前に倒れている半裸の女性に見覚えはない。と言っても、その貌は長い髪に遮られているので、ひょっとしたら知り合いかもしれない。もっとも、ぼくに死んだ彼女の髪を払うだけの勇気はなかった。
 思わず拾ってしまったナイフから指紋を拭いさり、改めて捨ててから、ぼくは彼女に背を向ける。ぼくと彼女は完膚なきまでに無関係だ。ぼくはコンビニの帰り道に彼女を見つけ、ついナイフを拾ってしまった。それだけだ。
 歩きはじめたぼくの視界が公衆電話を捉えた。ふと、もしぼくと彼女が本当に無関係ならば、ぼくは一般市民として警察を呼ぶべきではないだろうかと考える。いや、考えるまでもなくその通りだ。今この瞬間も誰かに目撃されていないとは限らない。いらぬ疑いは掛けられたくない。
 ぼくは電話ボックスに入った。
 視線を感じて、振り返る。
 そこに霧崎夜辺が立っていた。


『罠』470文字