雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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UNDER GROUND

 この都市はあまりに多くのものを、皮膚の下に隠している。
 雨の痕が汚らしく残ったコンクリートの道路。その両脇を固めているのは、真っ白なペンキがまぶしい洒落たブティックやコーヒーショップ。きれいな振りをしているけれど、ペンキの下にはどす黒い陰謀が渦巻いているに違いない。明け方近くの街を走りながら、私は手にしたスプレー缶で白い壁を蹂躙していく。赤や青みたいな原色で、白く清潔を装った空間を、端から汚して走って回る。けれど次の週か、次の次の週には、私のグラフィティは白いペンキの下に塗りこめられてしまう。まるでイタチごっこだ。
 ある朝、いつものようにスプレー缶を持って街に出たら、私は壁の陰に隠れていた数人の男たちに掴まってしまった。彼らは白いペンキで満たされたバケツを持っていて、私を壁に押しつけると、私を壁に塗りこめるように手にした刷毛を押しつけた。叫ぶ私の口の中も、私の長い髪も、白一色で塗りつぶされた。やがて作業を終えた彼らは帰っていったが、私の身体はしっかりと白いペンキで縫い付けられてしまい、少しも動かすことができなかった。私はそのままゆっくりと壁と同化してゆき、そのまま壁になってしまった。
 この都市はあまりに多くのものを、皮膚の下に隠している。


『落書虫』531文字