『犯罪予告状』
今年、千二百個の密室で、千二百人が殺される。誰にもとめることはできない。
密室先生。
出来上がった文面を見て、密室先生は淡く微笑んだ。既に千二百人を密室で殺すための計画は完成していた。後は、それを実行に移すだけ。犯罪計画書は五十ページの大学ノート、数十冊分に及び、そこに記載された密室トリックはどれひとつとして過去に類を見ない、たとえ東西の推理小説を紐解いたとしても前代未聞となるものたちであった。
密室先生は両手を広げ、バタンと床に倒れ、天井を見上げた。今、ここに至るまで密室先生は何千もの眠れない夜を過ごした。今日は大晦日。明日から密室殺人を開始せねばならない、さあ、起き上がって計画を実行に移そうではないか、起き上がって……起き上がって…………密室先生は、起き上がれなかった。
『零番目の被害者』二〇〇三年十二月三十一日深夜
■秋山真琴、性別=女、年齢一九、身長=一七四、体重=五五、血液型=AB、職業=無職。
■現場の状況→過労死。