雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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SPECTACLE TOWER

 陰鬱な暗がりから暗がりへと。塔の中は薄暗かった。外は曇っているのか、窓から月明かりが差し込むことはなく、ただ湿った風だけが吹き込んでくる。手にしている蝋燭から、蝋が滴りおちる。ポタリポタリと、まだ熱を持っている混濁した白色は橙色の灯火の下、紅色に輝き、急速に熱を失ってゆく。
 塔には果てがないかのようだった。上れど上れど、踏みこむべき階段は後を絶たず、歩きつづけるために酷使している膝は、悲鳴を通り過ぎて絶叫を上げていた。気がつけば、蝋燭の炎が消えかかっている。慌てて、懐の予備に手を伸ばし、炎を移しかえる。短くなりもう使えなくなった蝋燭は、螺旋階段の中央に投げ捨てる。淡い炎はすぐに闇に飲み込まれ、見えなくなってしまう。
 新たな、やや力強い光を経て、また歩きだす。
 いずれ至るであろう、天上へと。
 そこに己が名を刻みに。
 歩きだす。


『塔の断章』373文字