雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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PSYCHO READING

 すっかり酔いが回り、足許が覚束なくなっていた。当然、いきなりにやってきた自転車を避けられるわけもなく。衝撃に吹き飛ばされ、視界は暗転した。
 気がついたとき、視界は四角に区切られ、世界は縦に細長くなっていた。身体は少しも動かせず、視界を上下左右に動かすことも出来なかった。目蓋を降ろすこともできず、強制的に光景が見せられていた。まだ酔っているのだろうか。目の前に見えるのは書棚だった。棚には、何冊もの本がきれいに収められており、そこには埃ひとつなかった。やがて気がついた、背表紙になっていたのだ。どうして自転車に吹き飛ばされて、本の背表紙になってしまったかは判らないが、とにかく今は背表紙なのだ。
 目を開けたままジッとしていると、人が通りすがった。その人は、目の前で歩みを止めると、一直線に手を伸ばしてきて、首根っこを掴まれた。
 ぺらり。
 その人の足と床を見つめる中、本の表紙がめくられ、扉がめくられ、腹が切られる音がした。
 君は、今。その人に読まれているのだ。


『テレパシィ』436文字