雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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CHAROST

 その時代、民兵は肉の壁の代名詞であった。隊列の先頭に配置され、敵軍から放射される銃弾を消費させるためだけの存在。かつて自分たちの先祖が愛した、今は失われし祖国のために、彼らは前進する。
 民兵のひとり、名もなき彼は本を片手に戦場に赴いていた。第一陣の一番先頭。近くに指揮官はいない。彼らに命じられた唯一の作戦は、前進すること、ただそれのみ。武器を手に戦うことも敵兵も倒すために走ることも望まれていない、ただ、歩きそして死ぬためだけに彼らはそこにいる。いよいよ敵軍の第一陣の射程距離が近づいてきた。彼は本から顔を上げ、ページの隅を折ってポケットにしまった。
 開戦と同時に、迸る無数の銃弾。民兵たちは倒れ、その屍は踏まれてゆく。


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