雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

彼女が呼んでいる

 まあ、グダグダと考えるのは自分に課せられたタスクのようなものだから仕方ない――と、あらかじめ断っておこう。
 基本的に悲劇の主人公めいた行動があまり好きではない。また、後から自分の言動を振り返って後悔するのも、嫌いな部類に入る。しかし、反省は必要だろう、失敗は一度に限り有意義であるから。時間は有限で、好奇心も有限で、集中力と体力も有限で。そういった限界が判ってしまったならば、同じ失敗を繰り返すのは、さすがに控えたいと思う。となると、悲劇の主人公として演技をしている余裕も、後悔に明け暮れている余裕も、立ち止まって息を整えている余裕もなくなり、機械的に休息を取って、最短距離を駆け抜けるだけとなる。そのために余剰はカットせねばならず、精緻な機械の如く行動できることを最適と考える。
 まあ、それなりに意気込みはあるが、ここのところどうも失敗が続いている。万全な対策を整えたにも関わらず試験には落ちるし、稽古を重ねたにも関わらず試合には勝てない。本番に弱いタイプかと問われればそうではなく、どちらかと言うと本番の方が力を発揮できているように感じる。ならば失敗するのは、努力していないからだろうと言われても、反論できないからで、あるいは「そういう星の元に生まれたからでは」なんてくだらない思考にも逸れてしまう。
 基本的に悔いはない。同じ失敗を繰り返すことはないし、すべての経験に意味があると考えているから、悔いは生まれようがない。そういう流儀にかなった行動をしているのだけれど、失敗はあるし、ある種の行き詰まりも感じる。もしくは、同じ場所をグルグルと走っているのではないのかと不安になる。その状態を打破すべく、一歩、離れて自身を客観的に観察してみたりして。そうした場合、見えるのは自分がどうでもいいような矮小で些末な問題に直面して、落ち込んでいるというような事実。実際、大学受験や新人賞なんてのは、どうなんだろうか。悩むべき価値があるのかが不確定。むしろ、そういったポイントで悩んでしまうのは典型的なトラップで、気づきつつも踏破する――それぐらいの気合が要求されているのかもしれない。誰に? ええと、機械仕掛けの神とか。
 乙一滝本竜彦の小説を読んでいると、そこには「圧迫」と「解放」の繰り返しが見受けらる。ここらへんは大塚英志の『物語の体操』や『キャラクター小説の作り方』に詳しそうだが*1、要は「王様から竜を倒すように命じられ、竜を倒したらお姫様と結ばれた」と言うような、パターンが見てとれるもの。あるいは虐められていた少年が、何らかの困難を乗り越えて、最終的には少女と仲良くなる、と言うような。
 自分もそういった「圧迫」があり「解放=ハッピーエンド」があるような話を書ければいいのだが、どうも自分の根底に流れているのは「理解されないこと&期待を裏切ること」で、王様から竜を倒すように命じられ、そうしたにも関わらず、お姫様とは結ばれなかったり。少女を救うために奔走しても、彼女は遠い国に行ってしまったり*2。まあ、こういった簡単なストーリィだと、ただ単に「救われない」話だが、実際はもう少しコンプリケイトで閉鎖的。
 余談だが西尾維新の場合、いーちゃんは「圧迫」され続け、「解放」される気配がない。『クビシメロマンチスト』と『ヒトクイマジカル』では、彼を「解放」してくれたかもしれないヒロインが死んでしまっているし、人間失格は生死不明だし、みいこさんは死亡フラグ立ってるし。赤と青は論外だし。ここらへん、安易な「解放」が与えられていないのが、自分が西尾維新好きである理由なのかも。どうでもいいか。
 ネットに載せないわけで、結構いろいろ書いているわけですが、そういうのを見返したとき、「圧迫」から「解放」ではなく、「破裂」に至る話を多く書いてるなと思った。ラスボスを倒しても世界の崩壊は止まらなかったり、トリックを暴いたけど犯人に殺されたり。まあ、そこまでは比較的普通だから、ラストを「破裂」ではなく「解放」に変えてやれば安易な感動は与えられそうなんだが、なんだかなあ、どうだかなあと思いながら数ヶ月。同じ場所を延々と巡っているのにも疲れたので、壁を打ち破るべく「解放」でも「破裂」でもない、第三の選択肢を模索することにしました。
 それが本日、公開した短編小説の『彼女が呼んでいる』


『彼女が呼んでいる』――短編企画参加作品で、テーマは悪夢。
 正典における第六世代で、シリーズとしては『彼女の夢−殺人夜行−』に含まれる……といったどうでもいい設定を考えてあるけれど、特に意味はない。基本的に自分の作品はシリーズに組み込まれていようがなかろうが、単発作品と大差ないので、他の作品を読んでいる必要はなし。「他のシリーズを読んでいたら、より楽しめるかも」なんてケチな特典もなし。見込みも甘えも却下却下。
 短編企画として「悪夢」というテーマが挙げられているけれど、これは参考程度にしているだけなので深くは考えないように。まあ、とりあえず「悪夢」で書いてみました、ぐらいのね。
 さて、と。いつもの前口上でもしますか。まず読む必要ないです。感想書く必要もないです、読みましたよ報告とか義理で読んでみるとかも不要。ついでに言えば、このグダグダも読む必要ないです。作品との関連性も薄いし。まあ、敢えて言えば作者萌えのためみたいなもんです。作者萌え? アホらしい。
 とまあ、こんな感じですが、それを推して読んでかつ感想をくれる人には、感謝の辞を述べます。ついでにちょっとしたお願いをしてみれば、引用とかして、具体的にここが良かった、みたいな指摘をしてください。自分は幾つかのシーンや言葉を骨とし、それに肉付けるように物語を作ってます。ですから、その骨子の部分を言い当てられると、個人的に気分いいわけです。まあ、そんだけ。


 最後に蛇足。タイトルについて。
 結構、気に入っている。彼女が呼んでいる。
 今まで考えたタイトルで、我ながら上手いなあと思っているのは『眠らない少女を殺したのは誰』と『さあ、はじめよう。もう、おわりにしよう。』のふたつ。今回の『彼女が呼んでいる』は、ダブルミーニングが効いているし、シンプルだし、味出てるよなあ。やっぱ、タイトルは重要だよなあ……うんうん。

*1:ちなみに自分はどちらも未読

*2:そういう視点から考えると高田崇史の「麿の酩酊事件簿シリーズ」はダークだ