- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1998/11
- メディア: 単行本
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「肉食屋敷」小林泰三の本領が存分に発揮されている一篇。陰鬱とした心象・風景描写から緩やかに異界に入りこみ、一息に広げた翼で読者を包み込み、闇の中に突き落としてしまうように、容赦がなかった。久しぶりに読んだと言うこともあり、ちょっと夜が恐くなりそうだ。「ジャンク」人造馬と人面租から『吸血鬼ハンターD』を思いだした。あれと比べると格段に頽廃的で腐敗臭が漂っているけれど、ミステリ要素も含んでいて、面白かった。「妻への三通の告白」構造としては面白い。まず最初に三通目の手紙があって、次が二通目で、最後に一通目の手紙。当然、一通目の手紙には様々な謎への解答が書いてあるわけだけど、そのパワーが弱い。前二作が良かったものだけに、やや残念。「獣の記憶」は序盤が退屈だったが、最後の解決編および最後の一行の攻撃力が絶大。なるほどなるほど、そう来たかと。