雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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左巻キ式ラストリゾート

 目が覚めたときユウがいたのは、12人の少女たちが生活する学校だった。記憶をなくしていたユウは、生徒にして理事長に日本刀で脅され、連続強姦事件の犯人レイプマントーチ・イーターを探すように命令される。外部から隔絶され、学校だけしかない狭い世界の中で、ユウは被害者となった少女たちと会い証拠を集める。果たして犯人は誰なのか、そしてこの世界は何なのか。
 テーマそのものは作りこみが甘く、まだまだ余地があるのだが、構成とデザインに飛びぬけたものがある。まず構成。前半は捜査と称してトーチ・イーターが被害者の女の子たちに行ったのと同じ行為を繰り返し、ある種の追体験を取り入れている。後半ではユウとトーチ・イーターはほぼ完全に分離し、一気にミステリ色とサスペンス色が濃くなっている。次にデザイン。これは凄まじい。文字の大きさや濃さ、フォントの変更は勿論、背景に文字を入れたり、手書きで書き込んだりしてたりするのだ。『紙葉の家』をはじめ、デザイン的に凝った本を今までに何冊か読んできたが、本書のそれはかなり挑戦的で前衛的だ。アダルト小説なので読者を選びはするが、セカイ系ファウストなどのエンターテイメントを研究しているならば必読だろう。