雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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再潜水する火曜日

 奈須きのこ空の境界』を読み終えました。この作品、ネット小説として公開され、同人小説として頒布されたという前身を持っています。そして恐らくはそのために、信者と呼ばれる一部のファンは、本書を過剰に支持し、アンチと呼ばれる一部の人間は、本書の欠点を指摘し、それらによって本書は不必要なまでに注目されているように感じられます。本書は講談社の編集者、太田克史によって新伝綺と称されていますが、新伝綺という言葉は後からつけられたのであり、作品の方が先にありました。したがって本書は新伝綺として書かれたわけではありません。秋山は本書の第五章「矛盾螺旋」と第六章「忘却録音」が格別好きです。前者は、偶然盗みに入った泥棒が惨殺されている一家を発見し警察に通報、しかし警察官が駆けつけたとき一家は平穏無事に暮らしていたという魅力的な謎を提示されており、後者は、閉鎖的な女学院を舞台に女子高生の謎の自殺の原因を探るというストーリィになっています。その他にも本書にはミステリ的な手法が数多く使われており、結末で明かされる殺人鬼の真相は、物語全体を根底から覆すようなものです。しかし一部が面白い反面、無意味に長いというデメリットもあります。とは言え、本書は『月姫』や『Fate/stay night』に比べれば短いわけで、奈須きのこ入門としてはお手軽なところなのかもしれません。
 ある人の『もえかん』掲載予定作を、一足お先に読ませていただきました。どうしてかと言うと、雲上回廊トリビュートだからです。まるで何処ぞの、ペンネームが清涼飲料水に似ている作家になったような気分です。トリビュート具合も作品の出来も共に最高です。ウリオさん*1には、『もえかん』を手に取ったらこの作品を、是が非でも一番に読んでもらいたいです。