- 作者: 西尾維新,西村キヌ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/07/17
- メディア: 新書
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第一話「やさしい魔法はつかえない。」――シリーズの一作目。魔法使いや魔法の国などというファンタジィが現代に現実に存在するという舞台説明と、登場人物たちの紹介を兼ねた作品の尽き、語られている事件自体はわりと小振り。ちょっとしたミステリ仕立てになっているが、あくまでちょっとしたもので『ファウスト』第一号にこれが掲載されたときは僅かな失望を感じたことを覚えている。扉絵の「……なぜ、魔法はあるの?/……なぜ、変身するの?/……なぜ、大人になるの?/……なぜ、少女なの?」というキャッチコピィが素晴らしいものであっただけに残念だった。
第二話「影あるところに光あれ。」――基本的に第一話と変わらない。一行目から犯人が指摘されており、ミステリ色はないに等しい。アクションパートも最初から見え見えの切り札で切り抜け、パターンも第一話と大差なく、拍子抜けの感は否めない。また第二話に至っては、主人公の性格の悪さが本当に極まって、吐き気すら抱いた。最悪な話だと思った。
第三話「不幸中の災い。」――これを読む前に『ファウスト』第三号に掲載された第四話を読んだのだが、それはわりと面白かった。なので本書を手にとってみようと思い立ったのが、果たして大正解だった。第一話も第二話も今ひとつだが、第三話は素晴らしい。敵となる魔法使いの攻撃がパターンに富んでいて魅力的なのもさることながら、りすかの出番を減らすことでマンネリ化することを避けているのもポイントだ。……いや、他の何よりも特筆すべきは、228ページの上段だろう。待ち合わせに遅れた男女がよく交わす、何の変哲もないありふれた科白をまさかここに持ってくるとは、そしてそれがこれほどの効力を持つとは。またこれの前後も素晴らしかったし、最後の一行も思わず身が捩れた。いや、捩れはしなかったが。とにかく良かった。いーじゃん、いーちゃん。