雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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ブードゥー・チャイルド

ブードゥー・チャイルド (角川文庫)

ブードゥー・チャイルド (角川文庫)

 政宗九さんのネットラジオで「お勧めの歌野晶午はありませんか?」と問い掛けたところ、えんじさんが初心者向けにと紹介してくれた一冊。そういった手前、こういうことを言うのは気が憚るが、あまり面白くなかった。いわゆる前世と呼ばれるものを取り扱っており、そういった非科学的なオカルトと、科学的な遺伝子を繋げている意欲作なのだけれど、今ひとつ有機的に連動している感がなかった。主人公を高校生としているのも、個人的には止めてほしかった。語り口がいかにも現代的な少年なのだが、どうにもずれていて……思うに、典型的な現代的少年は本を読まないので、下手に現代的な少年を描こうとしても、実際に年齢が似ている人間からすれば「俺と違う!」と思うのは必然なのではないだろうか。――主人公は途中で強力な味方を手に入れるのだが、これも多分にご都合主義のにおいがした。いっそ、主人公の父親の方を主人公にしてしまい、その豊かな経験と知識でもってガシガシと攻めてきてほしかったと思う。
 批判的な点を幾らか挙げたが、ダイイングメッセージ的な扱いがされていなくもない悪魔の紋章と、主人公の前世の記憶の真相に関しては、実にミステリ的に優れていると思った。前者は実にさりげなく作中に差し込まれているし、後者は目次も意味を持ってくるし、良かったといえる。でもやはり、このふたつのネタだけで一冊の本にしてしまうのはあ、と思わないでもない。