雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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キノの旅8

 後書きが凄いだの、口絵が凄いだの、本編が凄くないのだとか色々と聞いていたけれど、読んでみて、実際にその通りだと感じてしまった。冷静に読んでみると、このシリーズで面白いのは三巻ぐらいまでではないだろうかと思うが、それ以降もまあ、面白く読める。しかし本書はいくらなんでもちょっとなあ、と。以下、雑感。
「道の国」上手くできている。シリーズ物でなければ機能しないのが難点だけれど、いいと思う。
「悪いことはできない国」口絵で一部の人間を狂喜させた一作。話としても落ちているし、キノの性格も出ていて楽しく読める。
「歴史のある国」これは構造がとても上手い。英語題も機能しているし、端整な一編だろう。収録された作品の中でも一番、好き。
「愛のある話」「ラジオな国」「救われた国」は駄目。以前に同じことをやっているし、構造も弱いし、時雨沢ならもっと書けるはず。
「船の国」これは程々に良かった。最後の挿絵前後の展開は、露骨に泣きを誘っていて、それはそれで雰囲気に浸れるのだけれど、これを読んですぐにプロローグに戻らないと、ネタに溢れた後書きを目にする羽目になり、一気に興醒めする。――シズが主人公格で、陸が語り手としてあるのだけれど、これは割りと面白い。普段はボケっぱなしのエルメスが、狂言回しとして活躍しているのが面白いと思った。