雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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三月、七日。

三月、七日。 (ファミ通文庫)

三月、七日。 (ファミ通文庫)

 あはあ、これはいいね。「拙くも、キュンと切ない、少年と少女の恋の軌跡(ラブストーリー)。」と裏表紙に書かれており、途中まで直球ど真ん中で突き進むのだけれど、最後の最後の大転換。これはちょっとしたミステリじゃないのかな(註:ミステリ好きは、何でもミステリに置き換えて考えようとします)。
 作者がその身を切り刻むように、言葉を選んでいるのが目に浮かぶよう。とても繊細な言葉群を、何とかしてひねり出しているように感じられる。恋に関する言葉を、何でもないように紡ぎだすよりは、ずっと素敵だと思う。特筆したいのは、ふたりの出会いが遅い点か。校庭越しに目が合ったりはするのだが、殆ど接点がないまま、ページが消化され、一体、いつになったらふたりは言葉を交わすのだろうか思わず心配になってしまうぐらい出会いが遅い。そして、出会ってからの急展開は凄まじい。ふたり共、何らかのトラウマを抱えており、それ故に互いを求める力が強いのだけれど、その理由として少女の方がより深刻なのに対し、少年の方は自己中だよなあ、と思った。まあ、当然である。
 結末に際して少年が出した答えが中々、勇気あるものであると同時に、それまでの彼同然、そつのないもので、一体、誰が答えを出せたのだろうか――なんて川上稔的問いを発したくなる。甘かったなあ。